日本大百科全書(ニッポニカ) 「服部健三」の意味・わかりやすい解説
服部健三
はっとりけんぞう
(1885―1942)
薬学者。大阪生まれ。東京帝国大学薬学科出身。丹波敬三の下で衛生裁判化学を研究し、第一次世界大戦中の薬品欠乏の危機に際しては優良薬品製造に寄与した。戦後、アメリカのハーバード大学からフランクフルトのコロイド化学研究所に留学し、所長ベッヒホルドHeinrich J. Bechhold(1866―1937)に師事。1921年(大正10)帰国。東大助教授を経て、1923年衛生裁判化学講座担当教授となり、酵素・コロイド化学の新分野を導入。赤血球が各種溶血試薬により異なる反応機序を解明、海外学説を覆す新知見を発表。また独創的方法により海外学者間で論争中の乳脂球の皮膜の本体を発見、ハプテンと命名した。脂溶性ビタミン、コレステロール研究、火災時発生ガスの毒性調査ほか先見的研究が多数ある。日本衛生学会創立とともに会長となり、日本薬学会会頭在職中に病没した。
[根本曽代子]