コロイド化学(読み)コロイドカガク(英語表記)colloid chemistry

デジタル大辞泉 「コロイド化学」の意味・読み・例文・類語

コロイド‐かがく〔‐クワガク〕【コロイド化学】

コロイド状態にある物質の物理的・化学的性質を研究する物理化学の一部門。膠質こうしつ化学。

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精選版 日本国語大辞典 「コロイド化学」の意味・読み・例文・類語

コロイド‐かがく‥クヮガク【コロイド化学】

  1. 〘 名詞 〙 物理化学の一分科。コロイド状態にある分散系、界面などの物理的、化学的性質を研究する学問。多方面に関連した広い学問分野として、「コロイド科学」ともいわれる。膠質(こうしつ)化学。

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改訂新版 世界大百科事典 「コロイド化学」の意味・わかりやすい解説

コロイド化学 (コロイドかがく)
colloid chemistry

膠質(こうしつ)化学ともいう。光学顕微鏡では認められないが,通常の分子よりは大きい粒子(直径10⁻6~5×10⁻4mm程度)が分散してコロイド状態にある物質系の物理的・化学的性質を研究する化学の一部門。コロイド状態は無機物有機物,あるいは合成物,天然物を問わず非常に広い範囲で存在するので,コロイド化学の領域はしだいに拡大され,現在,化学の一部門というよりも,むしろ物理学,生物学,地質学工学医学農学などの各分野にまたがる自然科学の一部門といった性格をもつようになり,コロイド科学と呼ばれることも多い。コロイドという物質概念は,1861年T.グレアムにより提唱されたが,この考えは必ずしも十分な妥当性をもたず,1909年F.W.オストワルトらは分散度に従って物質系を分類することにより,今日広く認められている状態としてのコロイドの概念を確立した。コロイド状態にある物質系はさまざまな物質を含み,さまざまな現象を示すので,これらのうち,ある局面が明確になり顕著な発展を遂げると,独立した研究分野として成長する。たとえば,1907年ドイツのフロイントリヒHerbert Max Finlay Freundlich(1880-1941)はコロイドにおける界面の重要性を指摘したが,界面の問題はその後界面化学として成長した。また,コロイド物質の一つとして重要な親水性コロイドの多くが実は一つの巨大分子であることが,22年H.シュタウディンガーにより示され,この問題は30年ころ高分子化学として確立された。さらにコロイドの示す特徴的な力学的性質は古くから注目されていたが,1929年ビンガムE.C.Binghamは,これらを包括してレオロジー流動学)という学問分野で組織化することを企てた。50年代に入ると分子生物学が誕生し,コロイド化学の対象の一部が分子生物学の対象として研究されるようになった。これらの変遷にもかかわらず,コロイド化学はなお多くの未解決の問題をもち,独自の思考手法をもって活発な研究が進められている。
コロイド
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化学辞典 第2版 「コロイド化学」の解説

コロイド化学
コロイドカガク
colloid chemistry

こう質化学ともいう.コロイド分散状態にある物質の物理的化学的性質を取り扱う物理化学の一部門.物質の種類を問わず,低分子(10-8 cm)よりは大きく,顕微鏡で認めにくい程度の大きさをもつ物質を扱うので,その関連する分野はきわめて広い.無機・有機の無生物から高分子(合成,生体),微生物(細菌,ウイルス)まで含まれるので,最近はコロイド化学というよりは,コロイド科学あるいはコロイド学などとよばれることが多い.理論体系としては,分散状態論と界面化学とが相補的に密接に複合した研究分野である.これは,コロイドの比表面積(表面積/体積)がきわめて大きいことによるもので,コロイドの性質はその表面(あるいは界面)の性質を無視しては考えることができないことが多いからである.高分子は分子自体がコロイドの大きさの範囲に入るので,分散状態においては分子コロイドにほかならない.元来,T. Graham(グラハム)(1861年)がコロイドの実在を示すのに用いた物質は,にかわ,タンパク質,デンプン,アラビアゴムなど,いまから考えるとすべて天然高分子の溶液にほかならない.生物体を構成する基本物質であるタンパク質が高分子であり,コロイドの大きさの範囲に入ることは生命現象とコロイド分散状態との関連性を示している.また,白金や還元ニッケルなどの微粒子の示す触媒作用は,化学反応の場としての表面と分散度とに関連する分野である.Kolloid Zeitschriftは,1906年,C.W.W. Ostwald(オストワルト)によって創刊されたコロイド専門雑誌であるが,現在,これにund Zeitschrift für Polymereが付加され,さらにColloid and polymer scienceと併記されている.アメリカではJ. of Colloid and Interface Scienceが発行されている.

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コロイド化学」の意味・わかりやすい解説

コロイド化学
ころいどかがく
colloid chemistry

コロイド状態にある物質について、化学的・物理的性質を研究する化学の一分野。自然界に存在するもののなかにも、また身辺の日用必需品のなかにもコロイド状態にあるものは数多い。たとえば鉱物や宝石、食品、合成高分子などがそうである。したがって、物理学や医学、生物学、薬学、地質鉱物学、農学などとも深く関連をもっているが、物理化学のなかでの特定の一分野としての独立の性格をもっている。コロイドは古くは膠質(こうしつ)といったので、膠質学あるいは膠質化学とよばれたこともあった。イギリスのT・グレアムが創始したもので、生体物質や高分子などの領域における発展が目覚ましく、時代の脚光を浴びるようになった。コロイドの化学的な性質は、粒子の大きさのみならず、粒子の表面(界面)にも大きく影響を受けるので、界面化学とは密接な関係にある。

[山崎 昶]

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