日本大百科全書(ニッポニカ) 「木目羹」の意味・わかりやすい解説
木目羹
きもくかん
太い棹物(さおもの)の蒸し羊かんで、軽羹と肩を並べる鹿児島名菓。南国の高木、クスノキの木目(もくめ)になぞらえた菓子だが、室町時代末期に守護大名島津武久が京都からもたらしたと伝えられる。特徴は、包丁の入れ方しだいで切り口に年輪や柾目(まさめ)、板目に似た文様が現れることで、口に含んだ感じはクワイのような淡泊な味わいである。製法は、アズキの漉し餡(こしあん)をつくり、別に白インゲンの漉し餡とヤマノイモのすりおろしを柔らかく溶いて小豆(あずき)餡の上に流し、三本歯の笄(こうがい)のようなもので手早くかき立て、蒸籠(せいろう)で蒸してから棹物に切る。小豆ういろうの風味とヤマノイモの香りを備えた品格の高い菓子であり、手仕事の作品だから木目文様は一棹ごとに異なる。また、普通に「もくめかん」とよばれる羊かんは、白インゲンの漉し餡と砂糖、寒天でこしらえ、表面に紅餡を流して軽くかいて木目を出したものである。正月料理の口取りなど祝儀用に使われるが、これは練り羊かんの一種である。
[沢 史生]