日本大百科全書(ニッポニカ) 「李‐ロバノフ条約」の意味・わかりやすい解説
李‐ロバノフ条約
りろばのふじょうやく
1896年、ロシア、清(しん)国間に結ばれた秘密条約。露清同盟密約ともいう。李鴻章(りこうしょう)とロシア外相ロバノフとの間でモスクワで調印された。ロシアは1891年シベリア鉄道の建設に着手し、これに関連して中国東北への進出をねらっていた。95年、ロシアはいわゆる三国干渉を行って日本から遼東(りょうとう)半島を還付させ清国に恩を売った。96年、ニコライ2世の戴冠(たいかん)式列席のため、李鴻章がロシアを訪れると、ロシアは彼に強請してこの条約を締結させた。その際、多額の賄賂(わいろ)が使われたという。条約は全6条。この条約によりロシアは、中国東北を貫く東清(とうしん)鉄道の敷設権を得、以後、急速に同地方に進出していった。よく秘密が保たれたため、いろいろ推測がなされた。1896年、『ノース・チャイナ・ヘラルド』紙上で、カシニ(駐清ロシア公使の名)密約12条が発表され、これが李とロバノフの密約の内容であろうとされた。しかし、カシニ密約は存在せず、ロシア革命後になってようやく李‐ロバノフ条約の全貌(ぜんぼう)が明らかとなった。
[倉橋正直]