ことわざを知る辞典 の解説
来年の事を言えば鬼が笑う
[使用例] 笑う者
[使用例] 「先生は、来年も、まだこの学校にいらっしゃるおつもり?」とヘンなことを、訊いた。「ええ、もちろんよ」「ずいぶん、自信がおありになりますのね」「自信? なぜです」「だって……来年のことをいうと、鬼が笑いますわよ」[獅子文六*信子|1938~40]
[解説] 「来年のことをいえば鼠が笑う」ともいいました。未来のこととなると、「一寸先は闇」で明日のことさえわからないのに、来年の話をしてもしかたがないという気持ちです。その根底には、未来が不可知であることに加え、ことばをうかつに口にすることへの畏れがあります。後者は、不完全な人間が、何でもわかったふうな口をきくことへの自戒といってもよいでしょう。ことわざは、これを理詰めで説得したり上から訓戒するのではなく、鬼という異界の存在を持ち出し、ユーモアのなかでおのずと納得させるレトリックを用いています。
江戸中期からよく使われるようになり、後期には上方のいろはかるたに収録されてさらに知られました。現代では、冗談めかして軽い意味で使われることが多くなっています。
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