来年の事を言えば鬼が笑う(読み)ライネンノコトヲイエバオニガワラウ

デジタル大辞泉 の解説

来年らいねんことえばおにわら

明日何が起こるかわからないのに、来年のことなどわかるはずはない。将来のことは予測しがたいから、あれこれ言ってもはじまらないということ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ことわざを知る辞典 の解説

来年の事を言えば鬼が笑う

来年のことは、どうなるかわからないから、めったなことで口にするものではないというたとえ。

[使用例] 笑う者いわく、余は鬼なり。たまたま諸君の談を聞く。笑わざらんことを欲すといえども、ほうふくに堪えず。〈略〉諺にいう、来年の事を言えば、鬼の為に笑わる。諸君独り来年の事を言うのみならず、また十余年後の事を言う。人生はほうまつ風前の灯の如し。あした有りて而して夕べ無し。なんぞ来年を約せん。いわんや数年の後をや(原文漢文)[石川鴻斎*夜窓鬼談|1889~94]

[使用例] 「先生は、来年も、まだこの学校にいらっしゃるおつもり?」とヘンなことを、訊いた。「ええ、もちろんよ」「ずいぶん、自信がおありになりますのね」「自信? なぜです」「だって……来年のことをいうと、鬼が笑いますわよ」[獅子文六*信子|1938~40]

[解説] 「来年のことをいえば鼠が笑う」ともいいました。未来のこととなると、「一寸先は闇」で明日のことさえわからないのに、来年の話をしてもしかたがないという気持ちです。その根底には、未来が不可知であることに加え、ことばをうかつに口にすることへの畏れがあります。後者は、不完全な人間が、何でもわかったふうな口をきくことへの自戒といってもよいでしょう。ことわざは、これを理詰めで説得したり上から訓戒するのではなく、鬼という異界の存在を持ち出し、ユーモアなかでおのずと納得させるレトリックを用いています。
 江戸中期からよく使われるようになり、後期には上方いろはかるたに収録されてさらに知られました。現代では、冗談めかして軽い意味で使われることが多くなっています。

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