東京の三十年(読み)とうきょうのさんじゅうねん

改訂新版 世界大百科事典 「東京の三十年」の意味・わかりやすい解説

東京の三十年 (とうきょうのさんじゅうねん)

田山花袋の回想集。1917年(大正6),書きおろしで博文館から出版。1911-12年,40の峠を越えるころから心の動揺が激しくなった花袋が,ようやく安定のきざしが見えた時期にA.ドーデの《パリの三十年》にならって,自分の歩いてきた半生を振り返り,それを址として見つめようとしたものである。花袋の眼を通して見た,明治より大正にかけての文壇の動き,交遊有様が,自然主義文学盛衰を中心にして展開され,多少の誤りや記憶ちがいもあるが,明治から大正への推移を知るうえでの貴重な文献であり,また近代化されていく明治の風物を知ることのできるおもしろさを持っている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android