松囃・松囃子・松拍子(読み)まつばやし

精選版 日本国語大辞典 「松囃・松囃子・松拍子」の意味・読み・例文・類語

まつ‐ばやし【松囃・松囃子・松拍子】

[1] 〘名〙
① 室町時代に盛んに行なわれた正月の芸能。唱門師や散所などの専業的な芸人のほかに、村民町人、諸家の青侍等が作り物を担ぎ、仮装したりして幕府、公卿・大名の諸邸に参上し、囃子や舞の祝福芸を演じ、祝いごとを述べて祿物などを頂戴したもの。
※看聞御記‐応永二三年(1416)正月七日「地下〈山村木守〉。風流之松拍参」
② 江戸時代、正月二日(のち三日)の夜、諸侯を殿中に召して行なう謡い初めの儀式。また、町家もこれにならった。《季・新年》
※俳諧・毛吹草(1638)五「松はやしこや年徳の神事能〈重久〉」
③ 正月、笛・太鼓・鼓ではやし、着飾った稚児羯鼓(かっこ)を打ちながらする踊り。また、そのおもかげを残す民俗芸能。
浄瑠璃・替唱歌糸の時雨(1782)下「一昨日の松囃子(マツハヤシ)に何処の子達も餝り立て行く中に」
④ 左義長(さぎちょう)の小屋で正月の飾りものを燃やすこと。飾揚(かざりあげ)。御松焼(おまつやき)。《季・新年》
[2] (松囃子) 狂言。和泉流。舞々(まいまい)の万歳太郎は、毎年暮に年取物として米一石ずつくれる旦那兄弟が今度に限って何もくれなかったので腹を立て、毎年、年頭祝儀に行なう松囃子を簡単にすませる。そして兄にとがめられるが、やがて年取物を与えなかったことに気がついた兄弟がすぐ持たせてやるというと、今度はていねいに舞い直す。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報