林黛玉(読み)りんたいぎょく(その他表記)Lín Daì yù

改訂新版 世界大百科事典 「林黛玉」の意味・わかりやすい解説

林黛玉 (りんたいぎょく)
Lín Daì yù

中国,清代の小説《紅楼夢》の主要人物。高級官僚の令嬢として江南に生まれ。幼時に母を亡くしたため,都にある母の実家賈(か)家に預けられ,祖母の史氏の庇護(ひご)のもとで育つ。賈家の従兄賈宝玉とは初対面のときからひかれあうが,それも道理,賈宝玉は天界の神瑛(しんえい)侍者の,また林黛玉は絳珠草(こうじゆそう)の生れ変りであり,侍者に甘露を注がれて女体に変じえた絳珠草は,後を追って下界に下り涙を返すことで大恩に報いたいと志願したのであった。林黛玉は詩才にたけた聡明無比の少女であるが,やがて父をも失い,孤女の身となる。賈宝玉を思慕しながら愛情を素直に伝ええぬいらだちと孤独感は,その詩作にも底流としてある。持病結核が進行するにつれ,血涙をすべて流し尽くしたとき天上にかえらねばならぬ宿縁を予覚しはじめる。病重なりかつてライバル視した薛宝釵(せつほうさ)に賈宝玉を託し,ついに夭折すると推されるが,原作はその前で杜絶した。後世の読者には,林黛玉の生き方をいとおしむあまり,絶食して命を縮める少女まで現れたという。
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