デジタル大辞泉 「甘露」の意味・読み・例文・類語
かん‐ろ【甘露】
1 中国古来の伝説で、天子が仁政を施すと、天が感じて降らすという甘い露。
2 《〈梵〉amṛtaの訳。不死・天酒の意》天上の神々の飲む、
3 煎茶の上等なもの。
4 夏に、カエデ・エノキ・カシなどの樹葉からしたたり落ちる甘い液汁。その木につくアブラムシから分泌されたもの。
5 「甘露酒」「甘露水」の略。
[名・形動]非常においしいこと。甘くて美味なこと。また、そのさま。「ああ、
[類語]露・露霜・朝露・
古代のインド,中国の伝承の霊薬。インドでは,もとサンスクリットのamṛtaで〈死なない〉ことを意味することばであるが,インド最古の古典《リグ・ベーダ》では転じて不死なること,神を意味し,そこから神々の食物や飲料をも意味するようになった。したがって,本来どのようなものであったかは明らかでないが,古代インドの伝承では,しばしばソーマ酒(ソーマなる植物より造った飲料,酒で神に供えられる)と同一視され,みつのように甘く,万病の薬とされている。漢文仏典では甘露と訳され,忉利天(とうりてん)より降る雨,甘い液で人の苦痛を治め,長生きさせる力をもつものと解された。また〈不死なるもの〉の意味から永遠の生命をもつ仏の教え,あるいは仏の教えによる悟りの境界を示すものともされた。甘露が醍醐(だいご)とも訳されるのはこの意味からである。なお,密教経典では阿弥陀仏(あみだぶつ)の阿弥陀はamṛtaの俗語形であると解釈し,阿弥陀仏と甘露とを同一視している。
執筆者:井ノ口 泰淳 中国では,《老子》に〈天地相い合して甘露を降らす〉とあるように,天地陰陽の二気が調和して降らせる甘美な露と考えられた。後世では太平の世に出現する祥瑞のひとつとみなされた。《白虎通》に,王者の徳が天にまでとどくと甘露が降るというのはそれである。また漢の武帝は銅製の承露盤のさきに仙人掌を設け,そこにたまる甘露を玉にまぜて服用し,仙人になろうとはかったと伝えられる。
執筆者:吉川 忠夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…ブラフマー(梵天)はそのへそに生えた蓮花から生じたという。太古,ビシュヌが音頭をとり,神々とアスラ(阿修羅)たちは,アムリタamṛta(甘露)を得ようとして,大海を攪拌した。その際,海中から次々と珍宝が出現し,ビシュヌの妃となったシュリー・ラクシュミーŚrī‐Lakṣmī(吉祥天女)もそのときに海中から現れた。…
…シバが山岳と関係あるのに対し,ビシュヌは海洋と縁が深い。太古,ビシュヌが音頭をとり,神々は大海をかくはんして不死の飲料アムリタ(甘露)を得ようとした。ビシュヌはその際に海中から生じたシュリー・ラクシュミー(吉祥天女)を妻とし,宝珠カウストゥバkaustubhaを首に懸けた。…
…師管の液はアブラムシが必要とするアミノ酸に乏しいので,十分なアミノ酸を摂取するためには,糖分の摂取量が過剰となる。アブラムシの排出物はこの余分な糖を含んでいるので甘く,甘露(かんろ)と呼ばれる。中近東などの乾燥した気候の地方では,甘露が乾いて塊状となったものを集めて食用に供することがある。…
※「甘露」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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