改訂新版 世界大百科事典 「柱状晶」の意味・わかりやすい解説
柱状晶 (ちゅうじょうしょう)
columnar crystal
結晶の形状の一つで,一つの方向に平行に成長したいくつかの面で囲まれた結晶をいう。固相状態で格子変態をしない純金属または1相の合金の鋳塊の結晶粒組織は,外側から内部に向かって柱状晶が発達している。鋳型に注入された金属の溶融液は鋳型で急冷されるため,鋳型近傍では多数の固相の核が生じて微細な等軸晶が形成される。これらの等軸晶の一部は温度こう配(鋳型壁面にほぼ垂直)に平行に成長する。このため柱状晶が形成される。固液界面近くの溶融液の温度こう配が大で,界面から少し離れた位置の液の温度が融点よりも高い状態では,広い領域にわたって柱状晶が形成される。そのような状態でなくなると,溶融液中に核が生成して新たに等軸晶の結晶粒を生じ,等軸晶領域が形成される。したがって,注入溶融液の温度が高く,核生成を助長する不純物が少ない場合に柱状晶ができやすい。タービン翼では,一方向凝固を行って柱状晶を軸に平行に形成させることにより,その耐熱性が高められている。
執筆者:林 宏爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報