栄養失調症(読み)えいようしっちょうしょう

六訂版 家庭医学大全科 「栄養失調症」の解説

栄養失調症
(子どもの病気)

 食べ物が余って捨てるほど豊かな現代では、肥満成人病が問題になることが多く、栄養失調症とは無縁かと思われがちですが、そうではありません。

 たとえば、アトピー性皮膚炎の治療のために、母親が神経質になりすぎて過度の食事制限をしたり、民間療法に頼りすぎて乳児が栄養失調症になる場合があります。また近年虐待(ぎゃくたい)のひとつであるネグレクト(養育拒否)が社会問題になっています。子どもは食事をとらせてもらえず、低栄養になります。親戚や近所の人、保健師、医療関係者などが早く気づき、適切に対処することでネグレクトによる子どもの死を防がなければなりません。

 乳児が低栄養状態になると抵抗力が低下して、重症な感染症にかかりやすくなります。医療機関を受診した時には手遅れだったということも少なくありません。

 年長児、とくに女児では、極端なダイエットや神経性食思不振症(拒食症(きょしょくしょう))から栄養失調症となることがあります。急激な体重減少には注意が必要です。

 このように、核家族化や孤立した養育環境などのもたらす不適切な子育てや、情報氾濫(はんらん)影響による誤った「やせ願望」など、昔ではみられなかった原因による栄養失調症があるのです。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「栄養失調症」の意味・わかりやすい解説

栄養失調症
えいようしっちょうしょう

栄養素の摂取量が不足したとき、あるいは摂取量が適当であっても消費量の高まっているときにも認められる栄養状態の低下をいう。一般に標準体重の約20%減以下を栄養失調症、約40%減以下を消耗症とよんでいる。特定栄養素の欠乏についてはビタミン欠乏症とか鉄欠乏症などとよばれる。また、発展途上国の一部(西アフリカやガーナなど)にみられる貧困によるカロリー欠乏のマラスムスmarasmusやタンパク欠乏のクワシオルコルkwashiorkorおよび両者の中間型もある。原因疾患としては消化吸収の悪い消化酵素欠損、消化器アレルギー、消化器感染症や全身感染症のほか、栄養素の利用障害または代謝の亢進(こうしん)、たとえば発熱悪性腫瘍(しゅよう)、膠原(こうげん)病、代謝性疾患(糖質・脂質・アミノ酸代謝異常など)、内分泌疾患クレチン病、甲状腺(こうじょうせん)機能低下症あるいは亢進症など)、腎(じん)疾患、肝不全などがあり、育児の欠陥や神経性食欲不振など精神、神経の因子によっても引き起こされる。原因疾患の治療をはじめ、食事療法や薬物療法を行うが、一般的養護として保温、皮膚の清潔、環境の改善をはじめ、乳幼児に対する授乳方法や食事については個別的に家族全体を考慮してくふうする必要がある。

[坂上正道]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

栄養・生化学辞典 「栄養失調症」の解説

栄養失調症

 →栄養失調

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android