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核無秩序化 かくむちつじょnuclear anarchy

知恵蔵の解説

核無秩序化

世界に存在する核兵器、核分裂物質、核廃棄物などが適切な政治的・技術的管理の下におかれず、平和や安全の脅威となっている「核アナーキー」ともいうべき事態のこと。現在、米国、ロシア、フランス、英国、中国、インド、パキスタン、イスラエルの8カ国が2万7000発あまりの核弾頭を保有していると推定されており、その95%は米ロが占めしている。また、国際関係の緊張激化の下で、北朝鮮やイランなどのように、核保有を正当化しようとする国が生まれる危険は、今後も減らない恐れがある。他方、2003年末時点で、世界には軍用・民生用を合わせると3730トンの高濃縮ウランとプルトニウムが存在するという推計もあり、40カ国以上が原子炉を稼働させている。これらの核兵器や原子力施設のすべてが適切に管理されているとは限らない。とりわけロシアや旧ソ連構成諸国の核施設の安全管理には大きな懸念がもたれている。1970年発効の核拡散防止条約(NPT)は、もともと核保有を5大国には認めて他の国には認めないという二重基準だったが、その後米国はイスラエルの核保有は黙認した。また現ブッシュ政権はNPT非加盟国インドと核技術協定を結び、「テロとの戦争」のためにパキスタンの核武装を黙認する反面、北朝鮮には「核無能力化」を要求し、イランの「核疑惑」に強硬姿勢を示すなど、5大国以外の国にも二重基準を適用し、核不拡散体制の混迷を招いている。また、米国はロシアとの間で戦略兵器削減条約に代わって02年にモスクワ条約を結んだが、核兵器廃棄は遅滞している。こうして、00年の核不拡散条約再検討会議の最終文書に明記された「核廃絶の明瞭な誓約」は完全に死文化されている。今日、核テロの危険性は無視できず、またパキスタンのような核兵器・核施設保有国の不安定化による核管理の弛緩(しかん)が、核兵器や核物質の拡散をもたらす危険は深刻な問題となっている。

(遠藤誠治 成蹊大学教授 / 坂本義和 東京大学名誉教授 / 中村研一 北海道大学教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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