中世末期の女性の髪の風俗。長い白い布で鉢巻のように頭を包み、前で結んで下げたもの。桂巻ともいう。京都西郊の桂の里から、鮎(あゆ)や飴(あめ)を京都市中に売り歩いた桂女(かつらめ)たちの習俗から始まると伝えられている。神功(じんぐう)皇后のいわゆる「三韓(さんかん)征伐」の陣中に桂女が仕えたおりに下賜された綿帽子を起源とする伝説を伝えている。絵草紙などをみる限り、貴族の女子にはこの習俗はなく、多くは庶民の女性風俗として描かれている。『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』に、「かつら包は、『室町日記』『甲陽軍鑑』などにみえたれども、昔は賤女(しずめ)なべて頭を包みたるが、後に桂巻と書くは、桂女にのみ其(その)風残りたれば、然(しか)いひけるなれど、かつらは長き意にて髪をいふなり……」と記される。
[渡邊昭五]
…中世の猿楽の能の面とともに用いる鬘帯(かつらおび)は,この古代の風習を受け継いだものである。また狂言の女の扮装に頭部を巻き包む鬘巻(かつらまき)(桂包)などがあるが,もともとこの鬘巻スタイルは中世の女性が働くとき長い垂髪をまとめるために布で包み結んだもので,歌舞伎などにもこの風俗が残っている。【橋本 澄子】
【演劇の鬘】
[能・狂言の鬘]
能の代表的な鬘は女役に用いるもので,黒髪を中央から左右に分け,耳を隠すように後ろへなでつけて元結(もとゆい)で結ぶ。…
…また女子では,日よけ雨よけを兼ねた垂衣(たれぎぬ)や,外出用で顔を隠す被衣(かずき)なども行われた。室町時代の被り物はだいたい前代の継承で,男子では烏帽子,藺や菅の笠,女子では市女笠と,白や黒の布を使った手ぬぐいかぶりの系統の桂包(かつらづつみ)が用いられた。ほかに剃髪した者の被り物として頭巾があった。…
※「桂包」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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