桂女(読み)カツラメ

デジタル大辞泉 「桂女」の意味・読み・例文・類語

かつら‐め【×桂女】

京都の桂に住み、神功皇后を祭神とする伏見御香宮ごこうのみや石清水八幡宮に奉仕したという巫女みこ。祝い事のある貴族の邸へ行って祝言を述べ、後には疱瘡ほうそうや安産の守り札を売り歩くこともした。桂姫。
桂の里に住み、桂川あゆあめなどを京都の町で売り歩いた女。頭を布で巻く風俗が特徴。
昔、貴人の婚礼のとき、花嫁の供をした女。鬘女かずらめ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「桂女」の意味・読み・例文・類語

かつら‐め【桂女】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 巫女(みこ)の一種。山城国(京都府)葛野郡桂村に住み、伏見の御香宮(ごこうのみや)に属し、石清水八幡宮にも仕えた。中古、諸家の祝事に訪れて祝言の祓をしたりして、女系相続の制度を明治初年まで続けていた。桂姫。
  3. 山城国(京都府)桂の里の女。桂川の鮎や桂飴を京都の町で売り歩いた。桂乙女。
    1. [初出の実例]「かつらめのあゆにはあらずあまびとのかづくあみきぬけふにあふひぞ〈源顕房〉」(出典:経信集(1097頃))
  4. 山城国(京都府)桂の里から出た遊女。一説に桂巻きをした遊女ともいう。〔随筆・貞丈雑記(1784頃)〕
  5. 昔、貴人の婚礼の時、花嫁の供について行った女。古くは、賤女(はしため)などが山城木綿(やましろもめん)を鬘(かつら)にしたところからという。〔随筆・春湊浪話(1775)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「桂女」の意味・わかりやすい解説

桂女 (かつらめ)

江戸時代,京都西郊の桂の地に住み,特徴ある白布の被物(かずきもの)を頭に巻き,年頭八朔には天皇・公家・京都所司代をはじめ富豪・有力諸家に出入りし,婚礼・出産・家督相続などのさいに祝言を述べた桂女は,古くさかのぼると平安後期,桂供御人として天皇に桂川の鮎を貢献した鵜飼い集団の女性たちであった。鎌倉時代には鮎を入れた桶を頭上にいただく鮎売りの女商人であったが,生業の鵜飼いが衰える室町時代には鮎鮨,酒樽,勝栗などを持ち,畿内を中心に広く各地の公家・寺院・大名の間を遍歴する一種の遊女として姿を現す。そのころまでには,祖先岩田姫が神功皇后に腹帯を献じ,それを被物にしたという伝説も成立し,女系相続も確立していたとみられる。勝栗を献ずる〈勝浦女〉は縁起のよい女性として戦国大名をはじめ豊臣秀吉徳川家康の軍陣にはべり,江戸幕府の保護をうけて,江戸時代を通じ,庶民の祝事に当たっても祝詞を述べるなど,その職能に即した活動をするとともに,江戸後期には桂飴を製し,飴売りをその一つの生業とするようになった。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「桂女」の意味・わかりやすい解説

桂女
かつらめ

京都市西郊の大堰川(おおいがわ)の末流の桂の里(現京都市西京区桂)から、京の町々へ鮎(あゆ)やうるか(鮎の腸)や飴(あめ)を売り歩いた女たち。頭を白布で巻いた桂包(かつらづつみ)の風俗で、中近世期にはよく知られていた。桂女の家は代々の女子相続で、古く平安・鎌倉時代に神功(じんぐう)皇后を祀(まつ)る京都伏見(ふしみ)の御香宮(ごこうのみや)の散所(さんじょ)に身を寄せた。もともと正月と八朔(はっさく)に京の貴人邸に伺候して鮎と飴を献上する風習が、売り歩く姿に変わったもので、ほかに神功皇后に従軍したという伝説をもち、中世には武士の家にも出入りし、戦勝祈願などの巫女(みこ)の役も行っている。御陣女中とよばれ戦陣にも参加して慰安婦を兼ねたらしい。また、武家の婚礼に、花嫁に付き添う慣習もあり、出産時には安産を祝い、子供の成長を助ける呪力(じゅりょく)も備えていた、と伝える。

[渡邊昭五]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

山川 日本史小辞典 改訂新版 「桂女」の解説

桂女
かつらめ

京都市西京区桂に住んだ鵜飼で鮎売りの女商人。鎌倉時代,天皇に桂川の鮎の貢納をした桂供御人(くごにん)として,畿内諸国を遍歴して鮎売りの交易に携わった。室町時代以降は,勝栗や酒樽を持参して畿内周辺の権門を訪問し,酒宴の席に侍る巫女的な遊女として知られるようになった。この時期の桂女は女系相続をし,白布を頭に巻きあげた独特の桂包(かつらづつみ)で知られ,その風俗は妊婦の岩田帯や,出産・婚礼の際の綿帽子の起源としても説明される。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「桂女」の意味・わかりやすい解説

桂女
かつらめ

山城国葛野郡桂の里 (現在の京都市西京区桂一帯) に住んだ女性のこと。その多くは桂の里特産の飴や桂川でとれたアユなどを京の町に売りに出たが,そのとき頭に白布を巻きつけるのを常とし,それを桂包みと称したため,この呼称が生れた。狭義には婚礼,出産,祈祷などの際,巫女のような仕事をした桂の里の女性をさす。もとは御香宮 (ごこうのみや) に属して石清水八幡宮にも仕えた巫女に由来する。ここの名主は明治まで女系相続を守った。なお現在では,時代祭の行列にその扮装が見られるだけとなっている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「桂女」の意味・わかりやすい解説

桂女【かつらめ】

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

普及版 字通 「桂女」の読み・字形・画数・意味

【桂女】けいじよ

月中の女。

字通「桂」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android