改訂新版 世界大百科事典 「極低温送電」の意味・わかりやすい解説
極低温送電 (ごくていおんそうでん)
power transmission by cryogenic cable
導体を冷却して極低温に保った状態で行う送電。超電(伝)導材料を導体とする超電導送電と,銅やアルミニウムを導体とし液体窒素などで冷却する極低温抵抗送電の2種類がある。
一般に電線を用いて電力を送る場合,電流を大きくすると電線の抵抗によって熱が発生し,電線や周囲の絶縁材料の温度が上昇するために,ある限度しか電力を送れない。したがって電線の抵抗を小さくすることができれば送電容量が増大する。電線の材料として銅やアルミニウムを用いているが,これらは不純物を極力少なくし冷却すると電気抵抗が減少する。例えば液体窒素で77Kに冷却すると,電気抵抗は常温の約10分の1になる。この性質を利用するのが極低温抵抗送電である。超電導状態では抵抗は0とみなせるので,この点からはさらにつごうがよい。超電導線では電流を大きくしていくと磁界が大きくなるために,超電導状態が破れてしまうことが一つの限界になる。極低温送電方式は昭和30年代から研究が開始され,まだ実用例はないが,最近の高温超電導体の発見によって,新しい局面を迎えており,将来の新しい送電方式の一つとして研究開発が行われつつある。
執筆者:河野 照哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報