改訂新版 世界大百科事典 「送電容量」の意味・わかりやすい解説
送電容量 (そうでんようりょう)
transmission capacity
ある送電線で送ることのできる電気の量を送電容量という。単位はkW。送電容量が大きいほど一度にたくさんの電気を送ることができる。送電容量を大きくするには電圧を上げるか,電流を増やすかすればよいが,高電圧,大電流の電気を送る技術はそう簡単ではない。200km以下の比較的短距離の送電では,流すことのできる電流の限界や送電損失から送電容量が定まる。使用する電線を太くしたり,電線の数を増したりして送電容量を大きくできる。この方法により,1982年東京電力の新茂木線(500kV,2回線)の送電容量は1000万kWに達し,日本全国の電力消費の約1/10の電気を送る能力をもつに至った。200km以上の長距離送電では安定度維持の能力が送電容量を決定する。日本では同じ鉄塔に2組の送電線を併設する2回線送電線が一般的であり,その1回線に事故が発生したとき,残りの1回線で安定な運転を維持する能力が要求されている。この能力は送電距離が長くなるほど小さくなり,送電容量も送電距離に反比例して小さくなる傾向がある。電圧が同じであれば500kmの送電線の送電容量は,250kmの送電線の約半分となる(図)。長距離送電線の送電容量を大きくするには,150ないし200kmごとに電圧調整のための中間開閉所を設けたり,そのほか技術的には高度な各種の安定度向上対策が立てられている。
執筆者:豊田 淳一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報