日本ではコンセプチュアル・アートということが多い。ネオ・ダダ,反芸術,ポップ・アートのあと,1960年代半ばからほぼ10年間,欧米の美術で主流をなした傾向をいう。概念芸術の根本的な考え方は,従来のジャンル区分,制作概念を離れて,芸術を〈芸術という概念〉にまで極限化しようとするところにあった。そこから,何であれ〈芸術家がそれを芸術と呼べば,それが芸術である〉〈芸術とは芸術の定義である〉という考え方にまで至ることになる。実際の〈作品〉は,写真や映像,文字,音を素材に用い,具体例としては,椅子,椅子の写真,辞書中の椅子の定義(文字)部分の拡大の三つを並置したもの(コスースJoseph Kosuth),3色のネオン管でthree color sentenceという文字を作ってみせたもの(同),人間の行為や自然の変化の記録(ギルバート&ジョージ,クラウス・リンケ,ハンネ・ダルボーベン,リチャード・ロング,ヤン・ディベッツ)などがある。日本の作家では河原温がいる。彫刻におけるミニマリズム(ミニマル・アート)は(また絵画上のミニマリズムも)部分的には,最低限の素材に彫刻を還元した点で,概念芸術と思想上一脈通ずるところがある。概念芸術の先駆として,ダダ,とくに1910年代以来のM.デュシャンの活動が重要である。
執筆者:千葉 成夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「コンセプチュアル・アート」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…そのことは実は,美術思想の面では,近代美術思想の極限化が1960年代に起こっていったことと相即不離の関係にあるといえる。そして,60年代後半にミニマル・アートとコンセプチュアル・アート(概念芸術)によって頂点に達するこの極限化(〈芸術といえばそれが芸術なのだ〉というコスースJoseph Kosuthの有名な言葉に象徴される)こそ,見方を変えれば現代美術思想への転換とその開始を告げていると言える。 美術における現代を考える場合には,このように様式面とともに,というよりもそれ以上に,価値概念の側面を正しく見きわめなければならない。…
※「概念芸術」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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