改訂新版 世界大百科事典 「標準労働者賃金」の意味・わかりやすい解説
標準労働者賃金 (ひょうじゅんろうどうしゃちんぎん)
第2次大戦後,日本の賃金交渉の特徴は,一つには企業別交渉が中心であること,二つには交渉が当該企業従業員の平均賃金の引上げをめぐる,いわゆるベースアップ方式であることにある。このベースアップ方式には,それが特定企業の労務費増額交渉にとどまり配分それ自体を交渉するものではないこと,また特定企業の支払能力に規制されやすく企業横断的な賃率形成を阻害する傾向にあることなどの問題がある。これらの難点を克服するため,ベースアップ方式と並んで,あるいは単独で個別賃金要求方式を労働組合がとる場合がある。標準労働者賃金要求方式はこの個別賃金要求方式の一つであり,標準労働者賃金とは,特定産業の最も代表的な年齢,勤続年数の労働者の賃金を指す場合と,学卒直後に入社し,毎年平均的成績で昇給昇格をした労働者の賃金を指す場合とがある。前者は鉄鋼労連などで,後者はゼンセン同盟,全金同盟(現,ゼンキン連合)などで採用されている。
執筆者:中村 圭介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報