日本大百科全書(ニッポニカ) 「機巧図彙」の意味・わかりやすい解説
機巧図彙
からくりずい
江戸時代に発達したからくり人形玩具(がんぐ)の仕掛けを説明した書物。土佐(高知県)の人、細川半蔵頼直(よりなお)の著。1796年(寛政8)に刊行された。「からくり」とは糸をからくりして操り動かす意味で、糸を引いたり、ぜんまい、水銀、砂、水などの圧力を利用して、人形玩具を動かす仕掛けをいう。
本書は、からくりの内部の仕掛けを図説したもので、機械玩具の解説書としては江戸時代唯一のものといえる。内容は、掛時計、櫓(やぐら)時計、枕(まくら)時計、尺時計など時計の作り方、および手遊び物の製法、伝授上下の3部から成る。手遊び物には、ぜんまい仕掛けの茶運び人形、水銀を応用した五段返り、連理(れんり)返り、竜門の滝、鼓笛(こてき)児童、揺盃(ようはい)、闘鶏、魚釣り人形、品玉人形の9種が収録されている。これらに用いられているぜんまいにはクジラのひげが使われていることなどが詳述されている。
[斎藤良輔]