ぜんまい

精選版 日本国語大辞典 「ぜんまい」の意味・読み・例文・類語

ぜんまい

  1. 〘 名詞 〙(やり)の一種。柄に穂先を固定する目貫穴がなく、穂の下端、中子の部分を曲げて取りつけた槍。印字槍。また、その槍の中子の曲げて固定した部分をいうとも。〔随筆・安斎随筆(1783頃)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ぜんまい」の意味・わかりやすい解説

ゼンマイ
ぜんまい / 薇
[学] Osmunda japonica Thunb.

ゼンマイ科の夏緑性シダ。太い塊状の根茎から、葉を束生する。葉には早春に出る胞子葉と、遅れて出る栄養葉の2型がある。栄養葉は淡緑色、葉身は洋紙質の三角状広卵形で2回羽状に分裂し、長さ60~100センチメートル、幅40~60センチメートル。小羽片(終裂片)は広披針(こうひしん)形で、長さ5~10センチメートル。先はとがらず、基部は無柄。胞子葉は葉身が縮み、葉肉が退化して、小羽片は線形である。胞子嚢(のう)を密生し、胞子を放出したあとに枯落する。ゼンマイは各地山野に生えるが、まだ葉の開かない若芽は、葉柄にタンパク質や炭水化物を多量に含むため、摘み取って食用にする。蒸してから乾燥させたり、塩漬けにすると蓄えることもできる。根はゼンマイ根(こん)といい、着生植物栽培の際、ヘゴの樹幹の代用にする。

 ブナ帯の明るい草原に群生するものにヤマドリゼンマイO. cinnamomea var. fokiensisとオニゼンマイO. claytonianaがある。ともに長楕円(ちょうだえん)形の1回羽状複葉を束生するが、前者は葉に胞子葉と栄養葉の2型があり、後者は葉の中部の数対の羽片が縮んで胞子羽片となる。いずれも食用となる。

[西田 誠]

食品

なまのものを使用することもあるが、多くはいったん干してから使用する。乾燥品は水でもどすことが必要であるが、市販品はもどしたものが多い。なまのまま干したものを「あお干し」、ゆでてから干したものを「あか干し」という。食物繊維が多く含まれている。調理法としては、もどしたものを適当な大きさに切り、油で炒(いた)め、ひたひたにだし汁を加え、煮立ってから酒、あるいはみりん、砂糖などを加えて煮込む。十分柔らかくなったところでしょうゆを加え、仕上げる。なお、油揚げがよく味にあうので、通常、細く切ったものを加えることが多い。

河野友美



ぜんまい
spring

薄い帯状の金属を渦状に巻いたもの。発条(はつじょう)、渦巻ばねともいう。巻き締めて弾性エネルギーを蓄え、ゆるもうとする力を利用して動力とする。通常、時計、玩具(がんぐ)などを動かす動力として使用している小動力用の小さなばねをいう。材料としては、ステンレス鋼炭素工具鋼が用いられる。

[中山秀太郎・清水伸二]

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改訂新版 世界大百科事典 「ぜんまい」の意味・わかりやすい解説

ゼンマイ
Osmunda japonica Thunb.

平地から山地にかけて,林下に普通のゼンマイ科の夏緑性シダ。ゼンマイは銭巻の意とされ,巻いている若葉が古銭の大きさだったからといわれる。ぜんまいばねの名は植物名から由来した。早春,まだ展開しない栄養葉の若芽を摘んで乾燥させたものは食用に供され,山菜の王者として珍重される。葉は胞子葉と栄養葉が全く異なる2形を示し,若芽は淡赤褐色の綿毛に密におおわれるが,成葉は無毛となる。胞子葉は春に展開して,胞子を散布すればすぐに枯死する。栄養葉は2回羽状複葉で,最下羽片が最も長いので葉面は三角状長楕円形となる。小羽片は開出してつき,長楕円状披針形で,基部は広いくさび形,無柄,辺縁に細かい鋸歯がある。脈は遊離脈で,側脈は中肋と約50度で交わっている。全国に広く分布しており,南サハリン,朝鮮半島,中国,台湾からヒマラヤにかけて分布している。

 ゼンマイ科は薄囊(はくのう)シダ類のうちで最も原始的な科であり,独立のゼンマイ目とされることもある。化石は二畳紀からすでに知られている。約20種が世界中に分布し,3属に分類される。

 近縁のヤシャゼンマイO.lancea Thunb.は日本固有の種である。必ず川沿いに生育し,小羽片が狭披針形,先端・基部ともに鋭形となり,羽軸に鋭角でつくなど,いわゆる流線形となって渓流沿い植物特有の形をしている。
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食の医学館 「ぜんまい」の解説

ゼンマイ

《栄養と働き&調理のポイント》


 ゼンマイは春を感じさせる代表的な山菜の1つ。全国の山野に自生しており、春先に摘んだ若芽を食用とします。一般的には、ゆでたものを乾燥させた干しゼンマイがよく使われています。
○栄養成分としての働き
 栄養成分としては、たんぱく質やカロテン、ビタミンB群などを含んでいます。
 生のものを干しゼンマイにすると、水分が減った分だけカリウム、カルシウム、カロテン、食物繊維などの栄養成分をたっぷり含むようになります。
○漢方的な働き
 民間療法では、貧血や利尿(りにょう)に乾燥させたゼンマイを煎(せん)じたものがよく使われます。
 ゼンマイはアクが強いので、使うときはかならずアク抜きをします。まず綿毛をとり、塩を入れた湯でしばらくゆでてすぐに水にさらします。そのまま2~3時間おきますが、にがみが残っているようだったら、さらす時間をのばします。完全ににがみを取り除きたいときは、重曹(じゅうそう)を入れた湯でゆでます。
 和えものやおひたし、煮もの、炒(いた)めものなどに利用します。とくに油との相性がいいので、炒めものがおすすめです。煮ものなら油揚げといっしょに調理をするとおいしくなります。
 干しゼンマイはもどしてから使います。もどし方は、一晩ぬるま湯にひたしたあと、中火から弱火でゆっくりとゆでていきます。

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百科事典マイペディア 「ぜんまい」の意味・わかりやすい解説

ぜんまい

渦巻ばねとも。薄い板金(いたがね)を圧延方向に一定幅に裁断してらせん状に巻いたばね。巻きあげて弾性エネルギーを保存し,ほどける力を利用する。材料は鋼,エリンバーなど。玩具の動力などに利用される。
→関連項目渦巻ばねばね振子時計

ゼンマイ

ゼンマイ科の夏緑性シダ。日本全土に分布,特に山地の谷沿いに多く,大群落を作る。地下茎は大株になり,葉は集まって出,高さ0.5〜1m。2回羽状複葉で,小羽片は披針形となり柄がない。春早く普通の葉の出る前に,胞子嚢だけの葉(胞子葉)が出る。巻いた若葉を干し,食用とする。
→関連項目シダ(羊歯)植物

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ぜんまい」の意味・わかりやすい解説

ゼンマイ
Osmunda japonica; royal fern

ゼンマイ科のシダ植物。日本およびシベリア,中国大陸からヒマラヤにかけて分布する。各地の山野に普通に生える。地中にある太い根茎から毎年春先に新葉を出す。葉は長さ 50~100cm,葉身は広い三角状卵形の2回羽状複葉になる。胞子葉はこれよりやや早く伸び,普通の葉と同様2回羽状複葉であるが,小羽片はほとんど脈だけから成り,そのまわりに多数の胞子嚢がついて穂のようになる。春,芽生えたばかりの先の巻いた若い葉は食用にする。

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栄養・生化学辞典 「ぜんまい」の解説

ゼンマイ

 [Osmunda japonica].真正シダ目ゼンマイ科ゼンマイ属の大型多年草.シダ植物で,早春にできる胞子葉,裸葉を食用にする.

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世界大百科事典(旧版)内のぜんまいの言及

【ばね】より

…(3)渦巻ばね 薄く細長い鋼を巻いてつくったばね(図2-c)。一般には〈ぜんまい〉の名で知られ,時計や蓄音器の動力源として用いられていた。現在でも,自動車玩具,リール,自動車のシートベルトの伸縮機構などに利用されており,とくに,最近になって成形加工技術の進歩に伴い,蓄積できる単位体積当りのエネルギー量は大幅に増大している。…

※「ぜんまい」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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