櫛造(読み)くしづくり

改訂新版 世界大百科事典 「櫛造」の意味・わかりやすい解説

櫛造 (くしづくり)

櫛を製作する職人。《延喜式》内蔵寮式の雑作手の中に造御櫛手2人が見えるが,和泉国近木(こぎ)郷におもな根拠を持ち,1135年(保延1),諸役免除の宣旨を得た内蔵寮御櫛生(みくししよう)はその流れをくむ集団であろう。五節の櫛などを貢献したこの集団は,御櫛生供御人・院御櫛造・近衛殿御櫛造として天皇・院・摂関家に兼属し,近木郷に給免田を与えられ,舂米しようまい)を給与された。内蔵寮領近木保・近衛家領御櫛造はその給免田を中心にした所領で,1224年(元仁1)御櫛生の畠地の所出は神今食御櫛油用途に充てられ,近木保は1333年(元弘3),櫛40束を内蔵寮に貢進している。市津での関料を免除され,諸国を遍歴,交易した御櫛生供御人は鎌倉後期,唐人,傀儡子(くぐつ)による櫛商売の濫妨を停止し,その特権を再保証する蔵人所牒を得た。近木櫛は江戸初期まで名産であるが,平安中期から知られる筑紫櫛も《七十一番歌合》の櫛挽の歌にみえ,山城,摂津,伊勢,長門紀伊薩摩などにも櫛作りの職人が分布するようになっている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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