死の家の記録(読み)しのいえのきろく(その他表記)Записки из Мёртвого дома/Zapiski iz Myortvogo doma

日本大百科全書(ニッポニカ) 「死の家の記録」の意味・わかりやすい解説

死の家の記録
しのいえのきろく
Записки из Мёртвого дома/Zapiski iz Myortvogo doma

ロシアの作家ドストエフスキーの長編小説。1861~62年、雑誌『時代(ブレーミヤ)』に発表。1850年から4年間の作者自身のオムスク監獄での体験に基づく記録文学風の作品。抑えた筆致帝政ロシアの監獄の実情をリアルに伝え、囚人の集団入浴の場面など「ダンテ的」(ツルゲーネフ)と評される迫力をもつ。囚人たちのさまざまな性格、心理、過去がみごとに描き分けられ、その後の小説の主人公たちの原型をみる思いもある。作者は「死の家」の住人たちを「むだに滅び去ったロシアの真の民衆」とみて、その再発見を契機に自身の思想的信念更生を目ざそうとする。

江川 卓]

『工藤精一郎訳『死の家の記録』(新潮文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の死の家の記録の言及

【ドストエフスキー】より

…この〈模擬〉死刑の体験は《白痴Idiot》(1868)になまなましく描かれている。 シベリアのオムスクで刑に服したが,その体験については《死の家の記録Zapiski iz myortvogo doma》(1862)に詳しい。このころ癲癇(てんかん)の発作が起こりはじめたという。…

※「死の家の記録」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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