残月亭(読み)ざんげつてい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「残月亭」の意味・わかりやすい解説

残月亭
ざんげつてい

京都市上京(かみぎょう)区の表千家にある書院で、利休聚楽(じゅらく)屋敷にあった色付(いろつけ)九間書院を写したものと伝える。利休の色付書院は、二畳の上段と四畳の中段を備えていながら、長押(なげし)がなく、天井も低く、化粧屋根裏が組み入れられたりして、穏やかな構成がくふうされており、数寄屋(すきや)風書院の先駆として注目される。残月亭では中段や周囲の入側が省かれ規模を縮小しているが、上段と付書院、その前の掛込天井という特色ある構成が巧みに再現されている。亭の名は、色付書院に来臨した秀吉が上段角の柱にもたれて突上げ窓から残りの月を賞(め)でた、という伝えによっている。

中村昌生

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の残月亭の言及

【住居】より

…室町時代に発達した茶の湯は近世初期の武家や貴族にも愛好されたが,その場の一つである草庵風の茶室の要素を,書院造の建築に採り入れたものが,数寄屋造の発生であるとされている。数寄屋造の古い例は豊臣秀吉が聚楽第に営んだ色付九間(いろつけここのま)の座敷(書院,表千家に残月亭として形式が伝承されている)であると考えられるが,定型化された書院造とは異なった自由な造形が好まれたためか,大名や貴族の別荘の建築に好んで用いられた。その形式は池に張り出したものや2階建,あるいは茅葺きのものなど,さまざまなものがあるが,共通する特徴をあげれば,次のようになる。…

※「残月亭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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