日本大百科全書(ニッポニカ) 「残月亭」の意味・わかりやすい解説
残月亭
ざんげつてい
京都市上京(かみぎょう)区の表千家にある書院で、利休の聚楽(じゅらく)屋敷にあった色付(いろつけ)九間書院を写したものと伝える。利休の色付書院は、二畳の上段と四畳の中段を備えていながら、長押(なげし)がなく、天井も低く、化粧屋根裏が組み入れられたりして、穏やかな構成がくふうされており、数寄屋(すきや)風書院の先駆として注目される。残月亭では中段や周囲の入側が省かれ規模を縮小しているが、上段と付書院、その前の掛込天井という特色ある構成が巧みに再現されている。亭の名は、色付書院に来臨した秀吉が上段角の柱にもたれて突上げ窓から残りの月を賞(め)でた、という伝えによっている。
[中村昌生]