水を売り歩く商人をさす。水質の悪いことや、水量の少ないことなどから、日本をはじめ諸国にこの商売がみられた。フランスでは16世紀に飲み水の不足から水売りがいた。アメリカの開拓時代には水売りの馬車が走っていた。中国の清(しん)代に、北京(ペキン)では良質の飲料水が乏しいため倒水的とよばれる水売りがいた。彼らは一輪車の上に井戸から汲(く)み上げた水を入れた桶(おけ)をのせ、各戸へ売り歩いた。日本では離島に水売り船が回ることがあった。江戸時代には、江戸、京坂の路傍で水を売った。その水の中には砂糖や、寒晒粉(かんざらしこ)でつくった団子を入れた。今日でもトルコ、インド、中近東などの国々では水売りがみられる。
[芳井敬郎]