…1644年,ドイツのイエズス会の神父A.キルヒャーが〈幻灯機〉を発明,セットされた2枚のガラス絵を左右に手早くスライドさせ,大食いの人物がブタに変わるといった〈動き〉のある映像が写し出された。日本では,江戸時代にオランダ人がもたらした幻灯機を使った〈おらんだエキマン鏡〉なる見世物に触発された小石川の染物上絵職人亀屋熊吉が,友人の医者高橋玄洋の助けで,その仕掛けの原理を利用した自前の器械を完成,池田都楽と名のって,1803年(享和3)に江戸で〈写絵〉と称する種板式幻灯を寄席で上演した。これはガラスに彩色絵をかいたもの(種板)を数台の幻灯機(フロ。…
…1886年の新聞記事の中にウツシエとルビをふった〈映画〉のことばが見いだされる。97年ころの4世池田都楽(江戸時代の〈写絵〉の考案者,池田都楽の4代目)の幻灯器械映画製造舗の通信販売広告には幻灯器械,すなわちプロジェクターと幻灯映画,すなわちスライドの目録が載っており,例えば〈仏教映画之部〉として《日蓮上人御一代記》とか,〈教育幻灯映画〉として《修身家庭教育》や《人身生理解剖之図》や《姙娠解剖之図》といった〈映画〉の題名が並んでいる。1912年10月,フランスの連続活劇《ジゴマ》の公開反対キャンペーンを載せた《東京朝日新聞》の記事の見出しには,〈活動写真の映画(フィルム)に現れた犯罪鼓吹熱〉という表現が使われ,映画作品を指すことばに移りつつあることがわかる。…
…光学を応用して映像を大写しにする幻灯は,17世紀に南ヨーロッパで発明されたらしく,文献上ではキルヒャーの《光と影の大いなる術》(1646)に紹介された著者考案になる〈ラテルナ・マギカ(魔法灯)〉が最初である。しかし現在の幻灯と違い,当時のそれは光源とレンズの外に種板を置き,正立像を写しだすものであった。この装置はキリスト教伝道のためのアトラクションないし民衆を驚愕させる見世物に利用された。映像を大写しにする技術自体は,16世紀半ばにG.B.dellaポルタがカメラ・オブスキュラにレンズを取り付けて作った〈魔法劇場〉等に先例を見るが,光源を内部にもつ箱の小孔から外へ映像を写しだす幻灯の形式とは逆に,外光を暗箱の内に引き込む仕組みであった。…
※「池田都楽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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