改訂新版 世界大百科事典 「沈殿銅」の意味・わかりやすい解説
沈殿銅 (ちんでんどう)
cement copper
銅イオンを含む水溶液の中から,他の金属によって還元され沈殿した金属銅。銅鉱山などにおいては,クジャク石,ラン銅鉱などの酸に溶けやすい銅鉱物の存在や,長年月にわたる鉱石の化学的酸化あるいはバクテリアの作用による酸化の結果,鉱水中に銅が銅イオンCu2⁺として溶け出し,その濃度は数十ppm以上に達する場合がある。このような場合には,鉱水から沈殿銅として銅を回収することができる。置換のための金属源としては,屑鉄,アルミニウムの空缶,海綿鉄などが用いられる。銅イオンは次に示す反応により,容易に沈殿する。
Cu2⁺+Fe─→Fe2⁺+Cu↓
(平衡定数K=2×1026)
鉱石からの銅イオンの浸出を促進するため,人工的に鉱体に多数の亀裂をつくり,そこに酸性水を循環させるなどの方法がとられる場合もある。これを組織的に行うのがインプレースリーチングである。インプレースリーチングやヒープリーチング(リーチング)などの方法で得られる浸出液からも,同様な方法で沈殿銅が回収される。
執筆者:井上 外志雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報