改訂新版 世界大百科事典 「リーチング」の意味・わかりやすい解説
リーチング
leaching
浸出ともいう。鉱石や焙焼(ばいしよう)鉱の中に含有される金属や金属鉱物などの特定の成分を酸,アルカリなどの溶媒に溶かし出し,残りの固体から分離すること。リーチングは鉱石から銅,亜鉛,ウランなどの金属元素を抽出するための一つの方法として広く応用されている。例えば銅の酸化鉱物である黒銅鉱CuOは次に示す反応によって硫酸に溶ける。
CuO+H2SO4─→CuSO4+H2O
また歴青ウラン鉱U3O8,センウラン鉱UO2・nUO3などは空気,Fe3⁺イオン,二酸化マンガン,過マンガン酸カリウムなどの酸化剤を併用することによって,酸やアルカリに溶かすことができる。例えば,
のようなぐあいである。
シアン化ナトリウムNaCNなどのシアン化合物の希薄溶液を溶媒とする金・銀鉱の製錬法は青化製錬法cyanidation processとして古くから広く行われている。これらは,
4Au+O2+8CN⁻+2H2O─→4Au(CN)2⁻+4OH⁻
4Ag+O2+8CN⁻+2H2O─→4Ag(CN)2⁻+4OH⁻
の反応による。
リーチングは精鉱や焙焼鉱に対する製錬技術としてばかりでなく,酸化鉱などを対象とする金属の直接採取法としても広く応用されている。この場合に粗砕きした鉱石を大きなタンクに入れて空気吹込みによる酸化とかくはんを行いながら金属元素を溶かし出すバットリーチングvat leaching,鉱石をヤード(貯鉱)に堆積し,これに薄い酸やアルカリの溶液を循環・散布するヒープリーチングheap leaching,鉱体に多数の割れ目を入れ,直接に水や酸を循環させるインプレースリーチングなどの方法がある。また坑内に生息する鉄酸化バクテリアなどを育成し,その働きを利用するリーチング法はバクテリアリーチングと呼ばれる。
執筆者:井上 外志雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報