改訂新版 世界大百科事典 「インプレースリーチング」の意味・わかりやすい解説
インプレースリーチング
in-place leaching
leaching in situ
鉱体から鉱石を採掘し,選鉱,製錬の工程を経て目的金属を回収する代りに,鉱体からその場で直接に金属を溶出させ,回収する方法をいう。収率は一般に低いが採鉱,選鉱などに要する経費が大幅に削減されるため,ふつうの方法では経営が成り立たないような低品位の鉱床や,ふつうの方法による採掘を終了した鉱床などに対し,しばしば適用される。日本では岩手県の土畑銅鉱山で行われたことがある。
インプレースリーチングにおいては,金属を溶出した浸出液が効率よく回収できるような地質条件に恵まれていることが前提となる。鉱体から効率よく浸出を行うためには,鉱体にできるだけ一様な割れ目を作ること,割れ目が沈殿物などによって目づまりを起こさないこと,浸出に必要な化学的条件が維持されること,などを配慮してシステムの設計と操業を行う必要がある。鉱石中の金属がイオンとして浸出するためには鉱物の酸化反応が基礎となるが,坑内に生息する微生物(鉄酸化バクテリア)がこの酸化反応に寄与することから,バクテリアの繁殖条件もプロセスの重要な鍵と考えられている。高濃度の浸出液を得るために,浸出液の一部を循環して鉱床の頂部から注ぎかけることが行われており,またこの用水に硫酸水溶液を用いることもある。
→バクテリアリーチング
執筆者:井上 外志雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報