波平行安(読み)なみのひらゆきやす

日本大百科全書(ニッポニカ) 「波平行安」の意味・わかりやすい解説

波平行安
なみのひらゆきやす

平安時代から近世まで続いた薩摩(さつま)(鹿児島県)の世襲刀工名。谷山郡波平の地に永延(えいえん)年間(987~989)ごろ大和(やまと)から正国(まさくに)という刀工が移住したと伝え、その子を行安といい、以後その嫡流は同名を名のって近世に及んでいる。現存する「行安」銘の作刀で最古のものは愛知県猿投(さなげ)神社所蔵の太刀(たち)で、1159年(平治1)を下らない時代の作とされている。波平派は鎌倉・室町期を経て幕末までその名跡をみるが、いずれも京や備前(びぜん)(岡山県)、美濃(みの)(岐阜県)物と異なり、伝統的で古風な作風である。時代的にもっとも新しいものでは、嘉永(かえい)年間(1848~54)から明治初めまで活躍した行安の「正国六十三代孫波平住大和介平行安(やまとのすけたいらのゆきやす)」銘のものがある。

[小笠原信夫]

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朝日日本歴史人物事典 「波平行安」の解説

波平行安(初代)

生年生没年不詳
平安後期の刀工。薩摩国(鹿児島県)谷山郡に住した。この行安をはじめこの地に居住した一派を波平派といい,永延(987~89)ごろ,大和国(奈良県)から移住したと伝える正国を祖とするが,正国の作品は現存しない。行安は正国の子と伝えるものを初代とする。同銘が幕末まで続くが,行安の作品で最も古いのは愛知猿投神社の「行安」2字銘の太刀で,次いで島津一族の樺山家に伝来した鎌倉初期とみられる「波平行安」銘の太刀がある。作風は鍛えに柾目があり,刃文は細直刃で焼落しがあるなど,所伝のとおり大和風がみられる。幕末には「正国六十三代孫波平大和介行安」と銘した者がいる。

(原田一敏)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「波平行安」の解説

波平行安(初代) なみのひら-ゆきやす

?-? 平安時代中期-後期の刀工。
波平家の祖とされる正国の子といわれる。行安の銘は各時代におよび,幕末に波平家の正国61代,62代,63代が行安を名のった。行安銘最古の作に愛知県猿投(さなげ)神社の太刀(重文)がある。

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