津名郡(読み)つなぐん

日本歴史地名大系 「津名郡」の解説

津名郡
つなぐん

面積:二四一・六三平方キロ
淡路あわじ町・東浦ひがしうら町・津名つな町・北淡ほくだん町・一宮いちのみや町・五色ごしき

淡路島の細長い北半部に位置し、北は明石海峡、東は大阪湾、西は瀬戸内海播磨灘に面し、南は洲本市、南西は三原みはらみどり町・西淡せいだん町に接する。島の北端から南西方向に常隆寺じようりゆうじ山・妙見みようけん山・摩耶まや山・せん山の各山系からなる津名丘陵が走り、津名町志筑しづき・一宮町尾崎おさき間に断層崖があって丘陵を分断している。丘陵は海に迫り、山がちで川も短い。丘陵の東側を東浦、西側を西浦といい、東浦海岸部は国道二八号が淡路町・東浦町・津名町を経て洲本市に、また西浦海岸部は県道福良ふくら江井えい岩屋いわや(淡路サンセットライン)北淡町・一宮町・五色町を経て三原郡に達し、東浦・西浦両海岸を結んで、東浦町仮屋かりや―北淡町富島としま間、津名町志筑―一宮町郡家ぐんげ間または五色町鳥飼とりかい、洲本―五色町都志つしまたは鳥飼間に県道が通じている。また海上交通は、平成一〇年(一九九八)の明石海峡大橋開通に伴う神戸淡路鳴門自動車道の完成により変貌。淡路町岩屋―明石間に高速艇とフェリー、高速艇は津名港から関西空港などへと富島―明石間に、フェリーは津名港―大阪府泉佐野間に就航するようになった。

〔古代〕

津名の郡名に「和名抄」東急本では「豆奈」の訓を付す。ただし津名郷の訓は「都奈」と記している。淡路国二郡のうちの一つ。津名郡の地名が確認できる古い資料としては、平城宮跡出土木簡に和銅七年(七一四)の年紀をもち、「淡路国津名郡物部里人夫」と記されたものがある。伝承に属するが、「先代旧事本紀」天孫本紀の示す誉田天皇の皇女のなかに「淡路三原皇女、次菟野皇女」とある「菟野」を「つぬ」とよんで津名にあたるという説があるが(大日本地名辞書)、「菟野」は「うの」と読むべきであろう。記紀伝承にはいくつかの淡路の聖水伝承がある。現津名町佐野さのにある御井みいの清水は、「古事記」仁徳天皇段に枯野という快速船で献上された「淡道嶋之寒泉」であるとされている(津名町史・三原郡史)。淡路の海人の伝承もあり、「万葉集」巻六にみえる山部赤人の一首「朝凪に楫の音聞ゆ御食つ国野島の海人の船にしあるらし」の「野島」は、現北淡町野島蟇浦のじまひきのうらに比定されている(常磐草)。大化(六四五―六五〇)前代の淡路の海人は、御贄貢上のほか舎人的役目も負ったといわれ、平城京二条大路跡出土木簡の天平七年(七三五)一〇月の年紀をもつものに「(表)淡路国津名郡阿并郷上里戸主」「(裏)海部麻呂戸口同姓色淵調塩三斗」とある「調塩」は、海人や海人少女らの手になる製塩によるものであろう。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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