日本大百科全書(ニッポニカ) 「海外療養費」の意味・わかりやすい解説
海外療養費
かいがいりょうようひ
海外渡航中に治療を受けた際の医療費。国外では日本の健康保険制度が適用されないため、渡航先によっては高額な費用の支払いを求められる場合がある。このような渡航中の事故や病気の備えとして、民間保険会社の旅行傷害保険に加入するのが一般的であるが、日本国内で加入している国民健康保険や企業の健康保険では海外療養費給付制度が設けられており、これを利用するという方法もある。申請には、(1)診療内容明細書、(2)領収書、(3)海外療養費支給申請書、(4)(1)と(2)の和訳のほか、可能であれば、受診した医療機関によるレセプト(診療報酬明細書)をそろえ、治療費を支払った日の翌日から2年以内に日本の健康保険組合などの保険者に提出する。また、不正受給を防ぐ目的で健康保険法が一部改正され、2016年(平成28)4月より申請者の渡航事実が確認できる書類が必要になり、(1)パスポートもしくは航空券等の写し、(2)海外の医療機関等に対し、照会を行うことに関する同意書の提出を求められる。同意書の書式は各健保組合などから入手することができる。申請が認められれば、海外で受けた治療と同じ治療を日本で受けた場合にかかる医療費を基本として算出された金額(標準額)から自己負担分を除いた金額が給付される。なお、日本国内で保険が適用されない治療や、臓器移植や不妊治療などの目的で渡航した場合には、給付対象とはならない。
海外療養費給付制度は、企業の健康保険では1981年(昭和56)から、国民健康保険では2001年から開始された。厚生労働省の「国民健康保険事業年報」によると、2011年度の国民健康保険における海外療養費給付状況(市町村・国民健康保険組合の合計)は、2万1508件、6億7000万円であった。
[編集部 2017年2月16日]