日本大百科全書(ニッポニカ) 「混合技法」の意味・わかりやすい解説
混合技法
こんごうぎほう
mixed technique 英語
Mischtechnik ドイツ語
テンペラ絵の具と樹脂を含む油絵の具の両者を併用して描く絵画技法。テンペラ技法の時代から油絵の時代へと発展する過渡期、あるいは油絵の初期において、行われたと推定されている。油絵の具の透明な効果と、テンペラによる精細な描線の特質を融合させることによって、堅固で精緻(せいち)な具象的形態を構築表現することができる。技法の基本は以下のとおりである。テンペラ絵の具を用いて下描(が)きの素描、インプリマトゥーラ(有色の地塗り)、白色による明部を描き、その上に樹脂油絵の具のグラッシをかけて色調を整え、まだ生乾きの上にさらにテンペラの白色で肉づけをする。そしてふたたび樹脂油絵の具のグラッシで描く。このように、油性絵の具と水性絵の具の性質を利用して、ぬれているうちに交互に描き加えていくウェット・イントゥー・ウェットの方法がこの技法の要点である。
[長谷川三郎]
『マックス・デルナー著、佐藤一郎訳『絵画技術体系』(1980・美術出版社)』