…江戸時代に入ると,国学の勃興とともにいわゆる〈新注〉の時代となり,契沖の《源注拾遺》や賀茂真淵の《源氏物語新釈》がいずれも文献学的実証を志向し,ついで本居宣長の《源氏物語玉の小櫛》は,その総論に,物語の本質は〈もののあはれ〉すなわち純粋抒情にありとする画期的な論を立てて,中世の功利主義的物語観を脱却した。しかし宣長以後は幕藩体制下,儒教倫理による《源氏物語》誨淫(かいいん)説の横行によって,その研究もふるわず,わずかに萩原広道の《源氏物語評釈》の精密な読解が注目されるにすぎない。
[鑑賞・享受史と影響]
読者の鑑賞享受はいうまでもなく作品成立とともに始まるわけで,日夜部屋にとじこもって耽読したという《更級日記》の作者が好例である。…
…号は葭沼,出石居,鹿鳴草舎,蒜園など。その著は《源氏物語評釈》《本学提綱》《万葉集略解補遺》その他20種に及ぶが,なかでも《源氏物語評釈》14巻(1861)は緻密犀利な評論において先人未到の域に達したが,病のため惜しくも〈花宴〉巻までで中絶した。【今井 源衛】。…
※「源氏物語評釈」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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