日本大百科全書(ニッポニカ) 「火星人ゴーホーム」の意味・わかりやすい解説
火星人ゴーホーム
かせいじんごーほーむ
Martians, Go Home
アメリカのSF作家フレドリック・ブラウンが1955年に発表したユーモアSF。ある日、忽然(こつぜん)として世界中に緑色の火星の小人(こびと)が無数に出現する。体長60~70センチメートルの彼らは神出鬼没、新婚の若夫婦の寝室、浴室、あらゆる場所に自由自在に姿を現しては地球人を観察し、皮肉をいって嘲笑(ちょうしょう)する。テレビやラジオの番組も彼らに干渉されて放送不能となり、各国の軍事機密も暴露される。しかも彼らは実体をもたないため、攻撃を受けても一時的に姿を消すだけで、地球人はノイローゼ状態に陥る。ウェルズの『宇宙戦争』のパロディーである本編は、暴力的手段を伴わなくても地球の文明があっけなく崩壊することを痛烈に風刺している。
[厚木 淳]
『稲葉明雄訳『火星人ゴーホーム』(ハヤカワ文庫)』