宇宙戦争(読み)うちゅうせんそう(その他表記)The War of the Worlds

日本大百科全書(ニッポニカ) 「宇宙戦争」の意味・わかりやすい解説

宇宙戦争
うちゅうせんそう
The War of the Worlds

イギリスの作家H・G・ウェルズの科学小説。1898年刊。19世紀末のロンドンに、円筒に身を潜め、V字型にえぐられた口と巨大な2個の目、無気味な触手をもった火星人が襲来し、不思議な熱線で人間たちを殺し、ロンドンを廃墟(はいきょ)に化してしまう。それから半月もすると、バクテリアに初体験であった彼らはその猛威のために死者続出し、再来恐怖を残したまま、また忽然(こつぜん)とこの地球を去って行く。この作品はロンドンのリアリスティック描写でも優れているが、他の惑星からの来襲だけでなく、地球人の他の惑星への脱出の可能性にも触れており、以後のほとんどの宇宙戦争ものの原点となっている。

[鈴木建三]

『中村能三訳『宇宙戦争』(角川文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

関連語 角川文庫

デジタル大辞泉プラス 「宇宙戦争」の解説

宇宙戦争

英国の作家H・G・ウェルズのSF小説(1898)。原題《The War of the Worlds》。地球外生命による侵略SFものの古典
②①を原作とした1953年製作のアメリカ映画。原題《The War of the Worlds》。監督:バイロン・ハスキン、出演:ジーン・バリー、アンロビンソン、レス・トレメインほか。第26回米国アカデミー賞特殊効果賞受賞。
③①を原作とした2005年製作のアメリカ映画。原題《The War of the Worlds》。監督:スティーブン・スピルバーグ、出演:トム・クルーズダコタ・ファニング、ティム・ロビンス、ジャスティン・チャットウィン、ミランダ・オットーほか。

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世界大百科事典(旧版)内の宇宙戦争の言及

【インベーダー】より

…一般に外部からの侵入者を意味するが,とくにSFにおいて宇宙からの侵略者に限定して使われることが多い。H.G.ウェルズの《宇宙戦争》(1898)は火星からの侵略を扱った古典的名作で,この作品のパロディとしてブラウンF.Brownの《火星人ゴーホーム》(1955)やプリーストC.Priestの《スペース・マシン》(1976)のような傑作が書かれた。また38年にO.ウェルズがH.G.ウェルズの《宇宙戦争》をもとに書いた放送劇が,これを現実の侵略を実況したものと勘ちがいしたアメリカ市民に恐慌をもたらしたことは有名である。…

【宇宙人】より

…1835年に新聞《ニューヨーク・サン》が大望遠鏡による月人観測のうそ記事を掲載して大騒ぎとなり,77年にG.V.スキャパレリが火星の筋模様を発見し,P.ローエルが《火星》(1895)という本でそれを運河であると主張してからは宇宙人の存在に関する議論が絶えることはなくなった。それも長い間火星人に関心が集中し,H.G.ウェルズが《宇宙戦争》(1898)において,重力と酸素量の関係で〈タコ型〉の火星人を想像してからは,この形の宇宙人が人々に親しまれるようになった。やがて,火星に知的生物が存在しえないことがわかると,遠い恒星系の惑星に関心が移り,宇宙人の想像図も多様をきわめるものとなった。…

【SF映画】より

…一方,ハリウッドでも,30年に初のSFミュージカル《50年後の世界》(デビッド・バトラー監督)が失敗するという例もあり,未来ものは当たらないというジンクスができて,SF映画はメジャー各社からは敬遠された。その裏には,パラマウントが,ウェルズの《宇宙戦争》(1898)の映画化を1925年に立案し,スペクタクル映画の巨匠セシル・B.デミルに白羽の矢を立てたが,デミルは興味を示さず,30年にはエイゼンシテインが,原作者の快諾を得て映画化を企画して果たさず,さらに32年にはヒッチコックがイギリスで映画化を企画し,製作者A.コルダが乗り気になったものの,映画化権を握ったパラマウントとの折合いがつかず,結局,コルダは同じウェルズの前述の《来るべき世界》を製作するに至ったといういきさつもある。そして38年には,アメリカで当時23歳のオーソン・ウェルズがこれをラジオドラマ化(《火星人来襲》)してセンセーションを巻き起こすことになる。…

【SF映画】より

…一方,ハリウッドでも,30年に初のSFミュージカル《50年後の世界》(デビッド・バトラー監督)が失敗するという例もあり,未来ものは当たらないというジンクスができて,SF映画はメジャー各社からは敬遠された。その裏には,パラマウントが,ウェルズの《宇宙戦争》(1898)の映画化を1925年に立案し,スペクタクル映画の巨匠セシル・B.デミルに白羽の矢を立てたが,デミルは興味を示さず,30年にはエイゼンシテインが,原作者の快諾を得て映画化を企画して果たさず,さらに32年にはヒッチコックがイギリスで映画化を企画し,製作者A.コルダが乗り気になったものの,映画化権を握ったパラマウントとの折合いがつかず,結局,コルダは同じウェルズの前述の《来るべき世界》を製作するに至ったといういきさつもある。そして38年には,アメリカで当時23歳のオーソン・ウェルズがこれをラジオドラマ化(《火星人来襲》)してセンセーションを巻き起こすことになる。…

※「宇宙戦争」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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