日本大百科全書(ニッポニカ) 「宇宙戦争」の意味・わかりやすい解説
宇宙戦争
うちゅうせんそう
The War of the Worlds
イギリスの作家H・G・ウェルズの科学小説。1898年刊。19世紀末のロンドンに、円筒に身を潜め、V字型にえぐられた口と巨大な2個の目、無気味な触手をもった火星人が襲来し、不思議な熱線で人間たちを殺し、ロンドンを廃墟(はいきょ)に化してしまう。それから半月もすると、バクテリアに初体験であった彼らはその猛威のために死者続出し、再来の恐怖を残したまま、また忽然(こつぜん)とこの地球を去って行く。この作品はロンドンのリアリスティックな描写でも優れているが、他の惑星からの来襲だけでなく、地球人の他の惑星への脱出の可能性にも触れており、以後のほとんどの宇宙戦争ものの原点となっている。
[鈴木建三]
『中村能三訳『宇宙戦争』(角川文庫)』