改訂新版 世界大百科事典 「火葬塚」の意味・わかりやすい解説
火葬塚 (かそうづか)
火葬場所を記念して設けた施設。火葬骨を納める火葬墓とは性格を異にする。古代・中世において,火葬場所を火葬塚とし,遺骨を別の墳墓に納める方式は最も格式の高い葬法であり,公式にこれを行えるのは天皇とその近親者に限られている。天皇・上皇・女院等の葬礼次第を記した《吉事略儀》(12世紀後半頃)には火葬塚について,貴所(火葬地)の施設を取り除いた後に土を盛ること,石卒都婆(いしそとば)を立てること,釘貫(くぎぬき)(木戸)をたて四面に溝を掘ることを記している。また奈良時代には,元正天皇が自らの厚葬を禁じて,火葬地と埋葬地とを別にせぬように詔していることから,逆にこの種の葬法が存在したことが推測できる(《続日本紀》養老5年10月13日条)。なお現在,火葬塚とする史跡が多数残されているが,確実な発掘例としては,京都市左京区北白川追分町京都大学理学部構内からの1例がある。
執筆者:宇野 隆夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報