日本大百科全書(ニッポニカ) 「点火装置」の意味・わかりやすい解説
点火装置
てんかそうち
ignition system
内燃機関、とくに往復動内燃機関の混合気を点火させる装置。内燃機関の初期には、パイロットバーナーによる火炎点火、熱管による点火、電気火花による点火などの方法が使用されたが、初期の電気火花は低圧の火花であり、信頼性から火炎と熱管による点火が多く使用された。1851年ドイツのハインリヒ・ダニエル・ルームコルフHeinrich Daniel Rühmkorffが感応コイルを発明し、1900年ごろにドイツのロバート・アウグスト・ボッシュRobert August Bosch(1861―1942)が高圧磁石発電機(マグネットという)を開発し、現在の高圧火花方式が点火装置として使用されるようになった。
点火装置は、一次電源となる蓄電池またはマグネット、一次電流の断続器、高い二次電圧を得る感応コイル、分配器、点火プラグからなり、一次電流の「断」のときに高圧火花を飛ばす。一次の断続を機械的な接点(ブレーカーという)で行うケタリング式が使用されていたが、断続をトランジスタで行うトランジスタ式が、高回転数でも強い火花が得られて点火時期をコンピュータ制御できるため多く用いられている。電気火花は二次電圧の高いほど、またやや大きめのエネルギーの火花を繰り返し飛ばすほど点火は確実になる。
また、20世紀末ごろからの排気清浄化に対応して毎回確実に着火燃焼させるために、燃焼室に多数取り付けた点火栓で点火したり、レーザー光線を照射して点火する方法も研究されている。
[吉田正武]