日本大百科全書(ニッポニカ) 「無季俳句」の意味・わかりやすい解説
無季俳句
むきはいく
俳句用語。季語・季感をもたない俳句のこと。明治末・大正初期の河東碧梧桐(かわひがしへきごとう)らによる新傾向俳句、日野草城(そうじょう)らが活躍した昭和初期の新興俳句、金子兜太(とうた)らの第二次世界大戦後の前衛俳句にみられた。その主張は、伝統の季感が現代人の生活感情の表現に不適当とするものであった。多くの同調者を得たが、伝統的立場の水原秋桜子(しゅうおうし)・山口誓子(せいし)らは、これを排斥。新興俳句は当局の弾圧によって中断したが、戦後、桑原武夫の「第二芸術」論をきっかけに無季俳句がふたたび始まった。「見えぬ眼(め)の方(ほう)の眼鏡の玉も拭(ふ)く」(日野草城)など。
[鷹羽狩行]