焦点・焼点(読み)しょうてん

精選版 日本国語大辞典 「焦点・焼点」の意味・読み・例文・類語

しょう‐てん セウ‥【焦点・焼点】

〘名〙 (focus訳語)
① 太陽光線が単レンズを通ってこの点に集中し、そこに黒紙を置くと焦げるところから、レンズや球面鏡の光軸に平行な入射光線が集中する、光軸上の点をいう。その点から出た光線はレンズや球面鏡によって平行光線となる。
※英和対訳袖珍辞書(1862)「Focus 焼点」
※美しい村(1933‐34)〈堀辰雄〉美しい村「その老人の焦点を失ったやうな空虚な眼差し」
② 数学で、楕円双曲線・放物線に付随する定点。これらの曲線上の点から、この点に至る距離と準線に至る距離との比は一定である。〔数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書(1889)〕
③ 注意や興味・関心などが集中するところ。
※二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉中「其悲歎も憂慮(きづかひ)も、涙も汗も、今日を焦点(セウテン)なる今日となりて」
④ 物事のいちばん重要なところ。中心となるところ。中心点。
黒潮(1902‐05)〈徳富蘆花〉一「藤沢伯を焼点(セウテン)として」
将棋で、駒が二つ以上に利いている地点。ここに打つ歩を「焦点の歩」といい、好手となることが多い。
[語誌]表記は、「工学字彙(一八八六)」では、「焼点」が用いられているが、「物理学術語和英仏独対訳字書」や「数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書」では、「焦点」に改められ、その後、学術用語としては「焦点」が多くなった。

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