日本大百科全書(ニッポニカ) 「熨斗模様」の意味・わかりやすい解説
熨斗模様
のしもよう
吉祥(きちじょう)模様の一つ。贈り物に添える熨斗を意匠化した模様。元来、熨斗とはアワビの肉を薄くむき、引き伸ばして干した熨斗鮑(あわび)のことで、これを儀式の際肴(さかな)として用い、のちには永遠の象徴として引出物・進物に添えるようになった。これが模様として盛んに用いられるようになったのは江戸時代のことで、1677年(延宝5)に出版された『小袖(こそで)御ひいながた』に小袖模様として取り上げられている。遺品としては江戸中期の国重要文化財「紋縮緬(ちりめん)地熨斗文友禅染振袖(ふりそで)」(友禅史会)がとくに有名である。熨斗はおめでたい模様として、振袖・留袖などに豪華に表されたものが多いが、江戸後期から明治時代にかけて木綿の型染模様として、あるいは絣(かすり)の模様として庶民の間でも愛用された。
[村元雄]