留袖(読み)トメソデ

デジタル大辞泉 「留袖」の意味・読み・例文・類語

とめ‐そで【留袖】

既婚女性の正装に用いる黒地五つ紋江戸褄えどづま模様の着物地色色物の場合は色留袖という。本来は、長い振袖の丈を結婚後に詰めて短くした。
男物和服で、袖付け全部縫いふさいだ袖。
[類語]振袖

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「留袖」の意味・読み・例文・類語

とめ‐そで【留袖】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 振袖に対して、女子の和服の普通の長さの袖。また、その着物。本来は袖の振りをとめて袖丈をつめたものをいうが、文化年間(一八〇四‐一八)から八つ口があいて今日に至る。ふつう女子は娘時代は振袖を、結婚後は留袖を着用した。現在では江戸褄模様のものをいう。
    1. 留袖<b>①</b>〈岩木絵づくし〉
      留袖〈岩木絵づくし〉
    2. [初出の実例]「留袖やむかしのこさににほひだま〈研思〉」(出典:俳諧・桜川(1674)夏二)
  3. とめそでしんぞう(留袖新造)」の略。
    1. [初出の実例]「『しづかにしてくれ、げへぶんがわりい』留袖の新『気がちがったさふさてんでんがわりいことをしなんして』」(出典:洒落本・青楼昼之世界錦之裏(1791))
  4. 香をたきしめた袖。
    1. [初出の実例]「私(わし)などが抹香計(ばかり)とめ袖に、飽きの来たのは御尤」(出典:浄瑠璃八百屋お七(1731頃か)上)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「留袖」の意味・わかりやすい解説

留袖 (とめそで)

既婚女性の礼装用着物。ひとこしちりめんに染めや刺繡,箔,絞りなどで松竹梅,鶴亀などの吉祥模様をあしらった裾絵羽模様の長着に,染めの陽紋(ひなたもん)の五つ紋付,裏にも同じ模様をつける共八掛(ともはつかけ)とする。黒地を黒留袖,他の地色のものを色留袖とよび,色留袖は未婚女性の礼装用としても用いる。既婚女性の礼装であった江戸褄模様が,裾をひく着装からお端折(はしより)をする着方へと変わったために,上前に重点がおかれた柄付けに移行した。名称は,女子の元服の際,振袖の袖を切って短くする袖留風習に由来する。現在の結婚式で,黒留袖を第一とし色留袖を披露宴用に扱うのは,色江戸褄は未婚女性の礼装で,既婚女性がこれを着るのは略式とされていた戦前の慣習による。宮中関係では戦前は黒を避けたが,現在では黒留袖も色留袖もとくに規定はされていない。白の襲(かさね)下着は布の経済性と着やすさなどから付比翼となり,長じゅばんは白,半襟も白の塩瀬羽二重を用いる。古式は丸帯に白丸ぐけの帯締を用いるが,袋帯に白や金銀の組紐でもよい。帯揚は白紋綸子(りんず),金銀張りの扇子を持つ。
礼装
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「留袖」の意味・わかりやすい解説

留袖
とめそで

振袖の袖丈の長いのを詰めて短くした袖のこと、また留袖の長着をさす。留袖の長着は黒留袖五つ紋付江戸褄(えどづま)模様の無垢(むく)のことで、既婚女性の礼装となっている。生地(きじ)は縮緬(ちりめん)を用い、白羽二重(はぶたえ)の下着を重ねて袋帯を締める。長襦袢(じゅばん)、半衿(はんえり)、帯揚は白を用い、帯締は白の丸裄(まるぐけ)、または白に金・銀をあしらった組紐(くみひも)を用いる。宮中においては既婚者でも黒地は用いず、色留袖を正装としている。民間では色留袖は、年齢の高い未婚者の正装、また既婚者の場合は身内以外の者の結婚式、披露宴の際などに用いられる。江戸中期までの小袖には、八つ口(振り)、身八つ口がなく、これを脇(わき)ふさぎ、脇詰め小袖と称した。しかし幼児の着物は体温を内に込めないように八つ口をあけ、これを脇明(わきあけ)小袖といった。女性が18歳の元服を迎えると振袖の丈を詰めて、袖丈いっぱいを身頃(みごろ)につけて仕立て直したことから留袖の名がおこった。江戸末期になると、帯幅が広く、一般に袖丈も長くなったので、年齢にかかわりなく振りのある形態になった。したがって袖型からみた留袖と振袖の違いは、袖丈の長短だけとなっている。

[岡野和子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「留袖」の意味・わかりやすい解説

留袖
とめそで

元来,小袖と同義で,腕を通す部分だけを残して,袖丈いっぱいに袖付けをした袖 (付け詰め袖,脇塞〈わきふさぎ〉小袖ともいった) およびその小袖をいう。江戸時代の女性は成人すると振袖の振りを縫合せて付け詰めにしたことからこの名が起ったと考えられている。その後,帯幅が広くなり袖丈が長くなったことから,袖には振りや身八つ口 (袖付けの下部の開き) を設けるのが一般となったため,留袖の名は残ったが本来の意味を失い,単に袖丈の長短によって振袖と区別されるにすぎなくなった。現在では留袖は既婚女性の礼服の江戸褄をさすことが多い。通常は白襟黒紋付の裾模様であり,下着や小物類は白を用い,帯または袋帯を締める。生地は縮緬 (ちりめん) 類が多い。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「留袖」の意味・わかりやすい解説

留袖【とめそで】

振袖に対し,袖丈が60cm前後の短い袖のことをいったが,現在ではほとんど江戸褄(えどづま)の紋付の着物をいい,礼装用とされる。地色が黒の黒留袖と,色ものの色留袖がある。
→関連項目江戸褄前帯礼服

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本文化いろは事典 「留袖」の解説

留袖

[女性用] 既婚女性の着用する中では、最も格式の高い着物で、振袖の袖を落としたものを留袖とよびます。全体が黒のものを黒留袖、色で染めてあるものを色留袖と言 い、身内の結婚式に出席する際などに着用します。黒留袖は既婚者のみの着用になりますが、色留袖は未婚者でも着用できます。

出典 シナジーマーティング(株)日本文化いろは事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の留袖の言及

【江戸褄】より

…これを大江戸褄,江戸褄後がかりと呼んだ。模様の変化にしたがって現在では留袖と名称が変わり,本来の江戸褄模様は,芸者の座敷着としてわずかに残る。小袖留袖【山下 悦子】。…

※「留袖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android