改訂新版 世界大百科事典 「熱雑音温度計」の意味・わかりやすい解説
熱雑音温度計 (ねつざつおんおんどけい)
thermal noise thermometer
抵抗体の中の自由電子は,熱の作用を受けて不規則に運動し,抵抗体の両端に不規則な電圧(いわゆる熱雑音)を生じさせるが,熱雑音の大きさは,抵抗体の温度によって変わる。このことを利用する温度計を熱雑音温度計という。原理は1928年に明らかにされたが,実際に温度計がつくられたのは49年であった。この温度計では,抵抗体が感温素子の働きをするが,抵抗体の材質が変わっても,また抵抗体にかかる圧力が変わっても,温度計の特性は原理的には変わらないので,学術上で熱力学的な温度測定に応用されるほか,高圧下とか原子炉内などでの実用的な温度測定にも試用され,とくに近年では電子技術的な改良とあいまって,いくつかの新形式のもとにしだいに広く使われるようになってきた。
執筆者:高田 誠二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報