片糸の(読み)かたいとの

精選版 日本国語大辞典 「片糸の」の意味・読み・例文・類語

かたいと‐の【片糸の】

① 片糸は縒(よ)り合わせるものであるので、「縒(よ)る」と同音、または同音を含む語「よりより」「夜(よる)」「因香(よるか)の池」にかかる。
古今(905‐914)仮名序「この人々をおきて、又すぐれたる人もくれ竹の世々にきこえ、かたいとのよりよりに絶えずぞありける」
※続後撰(1251)雑上・一〇七六「かたいとの夜鳴く虫の織るはたに涙の露のぬきや乱れん〈経乗〉」
② 片糸を縒り合わせる意で、「合(あ)わす」と同音、または同音を含む語「逢ふ」、地名「あはで」にかかり、糸を繰る意で、「繰(く)る」と同音を持つ「来(く)」及び、同音を含む地名「栗栖(くるす)」にかかる。
※新勅撰(1235)恋五・一〇〇七「かたいとの逢はずはさてや絶えなましちぎりぞ人の長き玉の緒〈後鳥羽院下野〉」
※新千載(1359)恋二・一二一一「かた糸の栗栖(くるす)小野一筋に逢ふべきふしや思ひ絶えなむ〈平兼盛〉」
③ 片糸の縁で、「絶ゆ」「乱る」、「緒」を含む「緒絶えの橋」また、「糸の節(ふし)」と同音を持つ地名「伏見」にかかる。
※続拾遺(1278)恋二・八五五「ぬきとめよ逢はずは何をかた糸の乱れて落つる滝の白玉〈藤原実氏〉」
※新後拾遺(1383‐84)恋四・一一八三「かた糸の緒絶えの橋や我が仲にかけしばかりの契(ちぎり)成るらん〈藤原長秀〉」

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デジタル大辞泉 「片糸の」の意味・読み・例文・類語

かたいと‐の【片糸の】

[枕]「よる」「くる」「あふ」「」「伏し」などにかかる。
「―あひ見むまでと年もへぬ」〈続後撰・恋二〉

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