化学辞典 第2版 「物質移動係数」の解説
物質移動係数
ブッシツイドウケイスウ
coefficient of mass transfer, mass transfer coefficient
吸収,蒸留,抽出などのような単位操作は,異相間の物質移動が主要な過程であり,物質移動は,おもに流体境膜内の分子拡散によって生じる.物質移動速度
dN/dθ(Nは物質量,θは時間)
は,移動を起こすための推進力ΔFおよび移動方向に垂直な面の面積Aに比例すると考えられ,その比例係数をKとすれば,
で表され,このKを物質移動係数という.異相間の物質移動では,一方が固相のときは一つの境膜,気-液,液-液相間のときにはそれぞれ気相と液相,液相と液相内に界面に接した2種類の境膜内での移動を考える必要がある.境膜内の移動を考えるとき,上式のΔFは流体本体の濃度と界面の濃度との差,またはモル分率の差をとる.このときの比例係数にはkを用い,これを境膜物質移動係数という.そしてガス境膜のときはガス境膜物質移動係数,液体のときは液境膜物質移動係数という.しかし,界面の濃度は,通常,測定不可能なために流体本体濃度だけで規定できる仮の総括推進力ΔF ′を用いる.この場合,総括推進力は,第2相本体濃度に平衡な第1相濃度と第2相本体濃度との差を用いる.このときには上式の比例係数Kを総括物質移動係数という.さらに,第2相を気相(液相)または連続相(分散相)としたとき,気相(液相)基準または連続相(分散相)基準総括物質移動係数という.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報