日本大百科全書(ニッポニカ) 「玉だれ」の意味・わかりやすい解説
玉だれ
たまだれ
わさびの香気をきかせた求肥(ぎゅうひ)製の棹物(さおもの)で、東京・日本橋の栄太楼が、1858年(安政5)の創業以来手がけてきた銘菓。菓子の名は、「雲の上はありし昔に変らねど、見し玉簾(たまだれ)の内ぞゆかしき」(謡曲『鸚鵡(おうむ)小町』)からつけられた。みじん粉、ヤマノイモ、砂糖、荒くおろした根わさびの練ったものを芯(しん)に入れ、白玉粉で作った求肥で切り口が円(えん)形となるように巻く。棹物1本の長さは18センチメートルで、この1本に根わさび3グラムが使われている。棹物を並べた感じが涼やかなすだれの趣(おもむき)を呈し、甘味のなかにツンとくるわさびの香りがさわやかなところから、夏の菓子とされる。わさびを餅につき入れた菓子は、鳥取県三朝(みささ)温泉や静岡県中伊豆にもある。
[沢 史生]