玉祖郷(読み)たまのやごう

日本歴史地名大系 「玉祖郷」の解説

玉祖郷
たまのやごう

和名抄」高山寺本に「玉祖」と記し、「多末乃也」と訓じる。刊本は「多万乃於也」と訓じるが、「たまのや」と読むのが定説である。

玉祖郷は、式内社でのち周防国一宮となる玉祖神社(現防府市大崎)によってできた郷名である。玉祖神社の初見は天平一〇年(七三八)の周防国正税帳(正倉院文書)に記載される「玉祖神税天平九年定頴稲参仟捌佰参拾肆束、雑用捌佰参拾壱束捌把、奉神壱拾束、改造神社用陸佰弐拾壱束捌把、□□五把、食稲弐佰拾肆束人別日四把、塩壱斗参升人別日二勺、直稲弐束参把以一束充六升、赤土弐升、直稲参束以一束五把充一升、以神命禰奇玉作部五百背弐佰束、定頴稲参仟弐束弐把、田租穀参拾玖斛弐斗捌升、右以神命天平八年迄十年合参箇年田租免給者」とあるのを初見とする。

玉祖郷
たまのおやごう

「和名抄」にみえる。高山寺本に「多万乃於乎」、東急本に「多末乃於也」の訓注があり、「たまのおや」と読む。「新撰姓氏録」(河内国神別)に「玉祖宿禰」がみえる。神代史の天孫降臨のとき、瓊瓊杵尊に供奉した五伴緒の一人玉祖命を祖とするという伝承(古事記)をもち、天武天皇一三年(六八四)に玉祖連より玉祖宿禰となった。この氏族が居住していたので、この郷名が生じたのであろう。「延喜式」神名帳の高安郡の条に「玉祖神社」がみえ、現在八尾やお神立こうだちに所在する。郷域は現八尾市内の神立・水越みずこし大竹おおたけおよびその西方地域であろう。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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