改訂新版 世界大百科事典 「番方役方」の意味・わかりやすい解説
番方・役方 (ばんかたやくかた)
江戸時代の幕府・諸藩の職制上の区分。武官の系統を番方,文官の系統を役方という。番方は常備軍として殿中・城門の守衛,城番,主君出行時の供奉などを職務とした。幕府には大番組,書院番組,小性組番,新番組,小十人組,徒士(かち)組,百人組,先手(さきて)組などがあった。その組織は番頭(ばんがしら)-組頭-番士,あるいは頭-与力・同心というもので,それぞれ数組ずつあった。これに対し,役方は吏僚として政務,事務あるいは典礼の遂行などを職務とした。幕府には側衆(そばしゆう),寺社・町・勘定の3奉行,奥・表の右筆(ゆうひつ),高家などがあり,その組織は区々であった。戦国時代からまもない江戸初期には番方が優位を保ったが,太平の時代を迎えて世の中のしくみが複雑化する中期以降には役方が重んじられた。しかし,番方は武士本来の職務として尊ばれ,格式上の優位は幕末におよんだ。
執筆者:北原 章男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報