同心(読み)ドウシン

デジタル大辞泉 「同心」の意味・読み・例文・類語

どう‐しん【同心】

[名](スル)《「どうじん」とも》
目的・志などを同じくすること。一つ心になること。
「それが我々―の道かと思われます」〈滝井無限抱擁
ともに事にあたること。協力すること。また、味方すること。
「義景公をはじめだれも―するものがござりませなんだ」〈谷崎・盲目物語〉
円などで、中心が同じであること。「同心円」
近世初期、武家に属した下級の兵卒。特に、徒歩の兵。
江戸幕府で、所司代・諸奉行などに属し、与力よりきの下にあって庶務・警察事務を分掌した下級の役人。

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精選版 日本国語大辞典 「同心」の意味・読み・例文・類語

どう‐しん【同心】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 古くは「どうじん」とも ) ( ━する ) 同じ考えを持つこと。同意すること。また、気持や意見などが同じであること。同じ意志。同意。同腹。
    1. [初出の実例]「長坂紫蘭、散馥同心之翼」(出典:懐風藻(751)秋日於長王宅宴新羅客〈山田三方〉)
    2. 「しかるに宋已来の人、互に相沿襲して弁ずることなしと、時々人にかたれども、誰も同心する人なし」(出典:随筆・秉燭譚(1729)三)
  3. ( ━する ) ともに事にあたること。仕事を手伝うこと。また、戦闘で味方すること。
    1. [初出の実例]「明日有験僧等参入同心合力、可奉加持」(出典:小右記‐長和元年(1012)七月二一日)
    2. 「さらば汝先つ出雲の国へ越て、同心すべき一族を語て御迎に参れ」(出典:太平記(14C後)七)
    3. [その他の文献]〔書経‐泰誓中〕
  4. ( ━する ) いっしょに行くこと。連れだつこと。同道。
    1. [初出の実例]「此日、肝付使者之宿へ、勘解由同心にて礼申候」(出典:上井覚兼日記‐天正二年(1574)八月九日)
  5. 近世初期、武家で侍大将などの下に服属した兵卒。
    1. [初出の実例]「足軽同心之事」(出典:長宗我部氏掟書(1596)掟)
  6. 江戸時代、諸奉行、所司代、城代、大番頭書院番頭などの配下に属し、与力の下にあって、庶務や警察の事に従った下級の役人。
    1. [初出の実例]「藤川の浪与力同心〈西吟〉 自然の時君につかへる志し〈西友〉」(出典:俳諧・西鶴五百韻(1679)葛何)
  7. 同じ時。同時。
    1. [初出の実例]「大雨と雪と同心に降るに依て」(出典:勝山記‐永正一二年(1515))
  8. 中心を同じくすること。中心が同じこと。〔物理学術語和英仏独対訳字書(1888)〕
  9. どうしんびょう(同心病)
    1. [初出の実例]「第一同心者、一篇之内再用同辞、詞人用心恨其同一レ之」(出典:孫姫式(10C後か))
  10. どうしんばい(同心梅)」の略。また、「うめ(梅)」の異名ともいう。
    1. [初出の実例]「頓に燈の下に衣を裁つ婦をして 誤って同心一片の花を剪らしむ〈章孝標〉」(出典:和漢朗詠集(1018頃)下)

おなじ【同】 心(こころ)

  1. 同じ思い。同じ気持。一つ心。同心(どうしん)
    1. [初出の実例]「かの寺の男の局、女のもおなじ心に住して」(出典:大和物語(947‐957頃)御巫本付載)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「同心」の意味・わかりやすい解説

同心
どうしん

鎌倉時代には加勢を意味した。室町時代には与力(よりき)とともに諸大名家に付属した武士をいったが、戦国時代になると一般化し、侍大将・足軽大将らの率いる諸隊に付属した軽格の武士をさすようになった。江戸幕府では、大番頭(おおばんがしら)、書院番頭、百人組頭、先手(さきて)頭、船手頭、京都所司代(しょしだい)、留守居(るすい)、町奉行(まちぶぎょう)、作事(さくじ)奉行、また遠国(おんごく)奉行などをはじめとする番方(ばんがた)・役方の諸職の支配に属し、馬上格の与力の指揮を受けた。徒歩(かち)の格で、30俵二人扶持(ぶち)高を基準とし、抱席(かかえせき)あるいは譜代(ふだい)席であった。

 なかでも有名なのは、江戸・大坂などの町奉行配下の町同心である。1745年(延享2)江戸の南北両町奉行所には合計240人がいた。その分掌は多岐にわたり、与力の指揮下に勤務するものに、年番方(ねんばんがた)、牢屋見廻(ろうやみまわ)り、吟味方(ぎんみかた)、町火消人足改(あらため)、町会所掛(がかり)、古銅吹所(こどうふきしょ)見廻り、市中取締諸色調(しょしきしらべ)掛、非常取締掛、人足寄場定(にんそくよせばじょう)掛、当番方、また奉行の直接の指揮下に勤務し、同心独自の役目とするものに、探索を務める隠密(おんみつ)廻り、町々を見廻り異変を取り調べ、法令に違反した者、挙動不審の者を取り押さえる定(じょう)廻り、臨時に各方面に出掛ける臨時廻りがあった。隠密廻り、定廻り、臨時廻りの三役は、総称して廻り方・三(さん)廻りなどといった。御目見(おめみえ)以下、羽織袴(はおりはかま)役、30俵二人扶持高の軽輩であったが、100坪余の屋敷地のうち表地面を町人に貸与して収入があり、また諸家に出入りし便宜を図って謝礼を得、ことに年番方、吟味方、廻り方など重要な役目についた者には、大名、旗本、富商からの付け届けが多額に上り、生活はきわめて楽なものであったという。京橋八丁堀(東京都中央区)の組屋敷に住み、頭髪を俗に八丁堀銀杏(いちょう)といわれる形に結い、服装は平素黒紋付の羽織で袴(はかま)をつけずに着流しにし、八丁堀の旦那(だんな)衆とよばれた。身分は一代限りの抱席であったが、現実には父子相継いで採用されたため、譜代席と同様であった。しかし、他の役職に転出することもなく、与力に昇格する機会もきわめてまれなことであった。

[北原章男]

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改訂新版 世界大百科事典 「同心」の意味・わかりやすい解説

同心 (どうしん)

もとは同意・協力する人を意味したが,戦国時代には,大名の家臣団編成において寄親たる上級家臣(部将)の組下に編入され,その指揮に従う武士を,寄騎,与力,寄子,同心などと称した。このうち同心は与力の何騎に対して何人と数えられ,主として在地の名主層出身のものであったといわれる。与力や同心はこのほか,郡代,奉行などの役職に対してもつけられたのであって,江戸時代の与力,同心はその後身である。江戸幕府では,町奉行,遠国奉行,先手頭などに与力とともに同心が付され,主として警察的職務を担当していた。このうち最も著名な江戸の町奉行配下の同心(町同心)について述べれば,定員は中期で南北各100名(幕末には各140名),身分は御家人で,形式上は一代抱えであるが,事実上世襲の職であった。京橋の八丁堀にある組屋敷に居住し,通常30俵二人扶持を給せられた。同心の職掌は,定町廻(じようまちまわり),隠密廻,臨時廻(以上を三廻りという)のように,緋房の十手を持って町中を巡回し犯罪捜査,犯人逮捕にあたる者のほか,年番方(役所全般の取締りや金銭出納),例繰方(刑事判例の調査),吟味方(裁判の審理),牢屋見廻(牢屋の事務監督),赦帳撰要方人別調掛(恩赦),町火消人足改(町火消の指揮)等,警察を中心に行刑,裁判から市政一般にわたる多くの分課があった。同心は各分課の与力の指揮の下に職務を行ったが,三廻りなど同心だけで構成される分課もあった。三廻りの同心は私費で小者,目明し,岡引(おかつぴき)を雇い,これを手先に用いた。
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百科事典マイペディア 「同心」の意味・わかりやすい解説

同心【どうしん】

本来は同意・協力する人の意。戦国時代には有力武将(寄親(よりおや))の指揮下に編成された下級武士(寄子(よりこ))を与力,同心などとよんだ。江戸時代には町奉行遠国奉行(おんごくぶぎょう),所司代(しょしだい),大番頭(おおばんがしら),書院番組頭(しょいんばんくみがしら),先手頭(さきてがしら)ほかに付せられ,与力の指揮のもとで主に警察業務に当たった。特に町奉行支配下の町方同心が有名。町方同心,町方与力と同じく八丁堀(はっちょうぼり)に組屋敷を与えられ,定員は江戸中期には南北各100人,幕末には各140人に増員。通常30俵2人扶持(ぶち)。→寄親・寄子
→関連項目大坂定番定火消八王子千人同心

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「同心」の解説

同心
どうしん

江戸幕府の下級職名。もとは一味同心から同意・協力する人を意味したが,戦国期には武士組織の頭に所属する下級武士の身分呼称となった。江戸時代には諸奉行・各種の番頭・所司代以下に付属し,多くの場合与力の配下で庶務あるいは警衛にあたった。定員は年代や職制の改廃により変動したが,漸増して幕末期には総数6786人であった。最多数は八王子千人同心の1000人,町奉行所の同心は280人ほど。与力の職務分掌ごとに2人ぐらい配属されたが,定廻(じょうまわり)・臨時廻・隠密廻の三廻など,同心だけの職務もあった。身分は1代限りの抱席(実質は世襲)。俸給は30俵2人扶持が標準で,役格(年寄以下11格)により若干の差がある。岡引(おかっぴき)(目明し)は同心の私的な部下。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「同心」の意味・わかりやすい解説

同心
どうしん

武家に仕える下級の武士。戦国時代には寄親 (よりおや) である武将のもとに従属した (→寄親・寄子 ) 。江戸時代には奉行などの配下にある下級役人。江戸では江戸町奉行所属の町方同心が有名で,市内の警察事務にあたった。

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普及版 字通 「同心」の読み・字形・画数・意味

【同心】どうしん

心を合わせる。〔易、辞伝上〕二人心を同じうせば、其の利(するど)きこと金を斷つ。

字通「同」の項目を見る

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旺文社日本史事典 三訂版 「同心」の解説

同心
どうしん

江戸幕府の下級役人
戦国期には,寄子に近い下級武士の称。江戸幕府では諸奉行など要職の配下に置かれ,与力の下で大小の庶務を執った。特に町奉行に属した町方同心は有名で,江戸市中の警察事務を分掌した。その下に町役人があった。

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世界大百科事典(旧版)内の同心の言及

【大番】より

…幕府開設後の1607年(慶長12)大御所家康の膝下駿府にまた3組が編成され,その後32年(寛永9)にさらに3組が取り立てられてつごう12組となり,以後これが定数となった。各組は大番頭1人(老中支配,菊間詰,諸大夫),大番組頭4人(頭支配,躑躅間詰,御目見以上),大番士50人(頭支配,御目見以上),与力10人(御目見以下,役上下,御抱場),同心20人(御目見以下,御抱場)で編成された。1723年(享保8)の制では,大番頭は役高5000石,大番組頭は600石,大番士は200石,与力は現米80石,同心は30俵二人扶持であり,役料は支給されず,そのかわりに在番中はそれぞれに役高の1倍の合力米が与えられた(ただし,1万石以上のものが大番頭になったときには1万石を支給する)。…

【町奉行】より

…1795年(寛政7)より1811年(文化8)までの北町奉行所の1ヵ年支出平均は1991両余である。両町奉行配下の与力(200石,50騎),同心(30俵2人扶持,200人のち280人)はそれぞれ職務を分担し,18世紀以降は仕事が細分化したため,1人でいくつもの役掛を兼任した。例えば天保改革期のおもな役掛は年番,本所見廻,牢屋見廻,養生所見廻,火事場人足改,高積見廻,風烈廻,昼夜廻,吟味方,赦帳撰要方,例繰方,定橋掛,町会所掛,猿屋町会所見廻,古銅吹所見廻,市中取締掛などのほか,北町奉行所には米蔵酒宿掛,酒造調掛,町入用減少掛,十組跡調掛,南町奉行所には御肴掛,市中沽券同人別掛,諸書物編集掛などがあった。…

【目明し】より

… 江戸では町奉行所,火付盗賊改がこれを使い,地方では関東取締出役の用いた道案内がよく知られる。町奉行所では,三回(さんまわり)(隠密回,定(じよう)回,臨時回)の同心が給金を与えて雇っておく私的な使用人であり,同心が自筆の鑑札を与えておくだけで,奉行所の吏員ではない。房のない十手をもって犯罪の探査をしたが,同心の命令がなければ逮捕はできなかった。…

【物頭】より

…戦国・江戸時代の武家の職名あるいは格式の一つ。一般に歩兵の足軽,同心などからなる槍(長柄(ながえ))組,弓組,鉄砲組などの頭(足軽大将)をいう。侍組(騎兵)の頭(侍大将)である番頭(ばんがしら)につぐ地位にあった。…

【寄親・寄子】より

…親子関係に擬して結ばれた保護者・被保護者の関係。戦国大名の家臣団組織の中で,寄親は指南,奏者などとも呼ばれ,寄子は与力(寄騎),同心とも呼ばれた。邦訳《日葡辞書》では,寄親を〈ある主君の家中とか,その他の所とかにおいて,ある者が頼り,よりすがる相手の人〉,寄子を〈他人を頼り,その庇護のもとにある者。…

【与力】より

…本来,力を与(とも)にして加勢する人を意味する語で,鎌倉時代から見られ,寄騎とも書いた。戦国時代,大名が家臣団を編成するにあたり,有力部将を寄親とし,これに寄子としてその指揮に従う武士を付属せしめ(寄親・寄子),これを寄騎(与力),同心などと称したが,このうち与力は,何騎と数えられるように騎乗の武士であり,地侍・小領主層の出身者であったと考えられている。このほか郡代,奉行などの役職にも,与力,同心が付属せしめられ,これが江戸時代の与力,同心の前身であったとされている。…

※「同心」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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