番頭(読み)バントウ

デジタル大辞泉 「番頭」の意味・読み・例文・類語

ばん‐とう【番頭】

商家などの使用人かしら。営業・経理など、店のすべてを預かる者。
警護すること。見張りをすること。また、その役。
「方々、きっと―つかまつれ」〈伎・勧進帳
風呂屋の番台に座る者。のち、風呂屋の下男や三助にもいった。
「この流しの男は、来年ごろ―にぬけやうといふ人物」〈滑・浮世風呂・二〉
番頭新造」の略。
「―さんをはじめ白川だ」〈洒・四十八手〉
[類語]支配人マネージャー

ばん‐がしら【番頭】

武家時代番衆の長。
江戸時代大番組小姓組書院番などの長。

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精選版 日本国語大辞典 「番頭」の意味・読み・例文・類語

ばん‐とう【番頭】

  1. 〘 名詞 〙 ( 古くは「ばんどう」とも )
  2. 宇多天皇出家後、一時、院の庁の侍者、判官代を称した名称。
    1. [初出の実例]「上皇脱屣之後〈略〉五位蔵人為侍者、六位蔵人為判官代〈略〉亭子院出家時、侍者・判官代称番頭」(出典:西宮記(969頃)一六)
  3. 荘園内での番を代表した有力名主。荘園領主は年貢・公事徴収の必要上、荘園を番に分け、各番内の有力名主を番頭として荘民(番子)を管理統制させた。年貢の徴収を請負う者もいた。
    1. [初出の実例]「為後代亀鏡、加番頭之連署、注置之状如件」(出典:勝尾寺文書‐建長二年(1250)七月一〇日・勝尾寺重書目録)
  4. 殿中、宮中などの見張り・警護の役。また、その長。武家の番衆のかしら。見付番のかしら。
    1. [初出の実例]「番頭城九郎泰盛」(出典:吾妻鏡‐寛元二年(1244)六月一七日)
  5. 中臈の随身。
    1. [初出の実例]「四方輿御力者〈三手十八人〉番頭八人」(出典:明徳二年室町殿春日詣記(1391))
  6. ( ━する ) 見張りをすること。厳重に警護すること。
    1. [初出の実例]「油断なく昼夜の番頭(バントウ)」(出典:歌舞伎・入間詞大名賢儀(1792)四段)
  7. 寺の事務をつかさどる長。
  8. 商家の雇人のかしらで、店の万事を預かるもの。普通、丁稚(でっち)から勤めあげ、元服して手代となり、手代を勤めあげた者がなる。単なる店番のかしらという意味にも用いられるが、多くは営業に関するある事項を店主にかわって委任された者の称で、特に大坂などではしばしば主人よりは上の地位にあった。伴頭。
    1. [初出の実例]「其家にて番頭(バンタウ)とあがめられ」(出典:浮世草子・世間手代気質(1730)三)
  9. 湯屋で番台にいる湯番。後には、三助、また、広く湯屋の下男の意にもいった。
    1. [初出の実例]「湯屋の管長(バントウ)は、常の居眠に増を加へ」(出典:滑稽本・麻疹戯言(1803)送麻疹神表)
  10. ばんとうしんぞう(番頭新造)」の略。
    1. [初出の実例]「傾城にばん頭の名は堅すぎる」(出典:雑俳・柳多留‐八(1773))
  11. 芸人のもとにあって、会計や外部との交渉などをつかさどるもの。また、その身のまわりを宰領するもの。
    1. [初出の実例]「計人(バントウ)二位(ふたり)、筆を簪して薄を守る」(出典:江戸繁昌記(1832‐36)初)

ばん‐がしら【番頭】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 番の構成員の中の責任者。ばんとう。〔文明本節用集(室町中)〕
  3. 江戸幕府大番頭書院番頭・小姓番頭・新番頭などをいう。→番衆(ホ)
    1. [初出の実例]「番頭并一人立の歴々を上士と云べし」(出典:集義和書(1676頃)八)

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改訂新版 世界大百科事典 「番頭」の意味・わかりやすい解説

番頭 (ばんとう)

(1)中世の荘園における下級荘官の一種。平安後期の1127年(大治2),加賀国額田(ぬかだ)荘にみられるのが早い例であり,以後中世を通じて存在した。畿内周辺の紀伊,近江,加賀,能登などに多くみられる。荘園領主に対する月次(つきなみ)の公事(くじ)(夫役(ぶやく)や綿,絹,酒などの雑公事(ぞうくじ))を勤めるために,荘園の下地(したじ)は幾つかのに編成されており,その番が公事をかけられる単位となっていた。このため荘園内の番の数は12ヵ月に割り振ることができるよう6の倍数になっているものが多い。これらの番は,地名,人名または数詞を冠して呼ばれた。そのおのおのの番にかけられた公事を勤める責任者が番頭である。番の編成の仕方は多様であり,大別してそれぞれの番がほぼ等しい面積となるような均等な編成と,それぞれの番の面積が違う不均等な編成との2種類がある。もともと荘園の下地は幾つかの(みよう)に編成され,それぞれの名の名主(みようしゆ)が自分の名にかけられた年貢,公事を勤める責任者となっていた。番の均等な編成には,この名を適当に組み合わせ,均等な面積になるようにしたものと,この名の編成とは別にそれぞれの耕地を適当に組み合わせて均等な面積にしたものとの2種類があった。また不均等な編成には,荘園の名をそのまま番としたものと,一部の番は名そのまま,他の一部の番は複数の名の組合せ,また一部は別々の名に編成されている耕地を組み合わせたもの,という複合的な編成原理をもつものとの2種類があった。こうした番の編成からも推測できるように,番頭には,荘園内の名主たちの中から有力な者が選ばれ,領家または下司(げし)によって任命された。番頭には〈番頭給〉〈番頭免〉と呼ばれる給田給米が与えられ,番内の土地に権利をもつ名主などの農民を指揮して公事を勤めていたと考えられる。室町ごろになって村落の自治活動が活発になると,〈古老百姓〉として伝統的に村落の特権層だった番頭は,この活動の中心となった。
執筆者:(2)商家の使用人が丁稚(でつち),手代(てだい)を経て到達する最後の段階。番頭には一人制のものと数人制のものとがあった。数人制の場合にはその首席のものが支配人となって,商売上の権限ないしは家政の大半をにぎるようになった。一人制では番頭が支配人となって,手代以下のものを統率した。支配人は主人に代わり店のこといっさいを代行するものである。支配人には本家支配人と店々支配人があった。近世の大商店では営業が発展するとともに各地に支店または出店を設けた。枝店(えだみせ),出店の支配人が店々支配人であり,本店(ほんだな),元店の支配人が本家支配人であった。支配人のほかに,これを助ける支配脇(わき)が1~2人いた。支配人や番頭,支配脇のような人々はおおむね別家居住であった。別家には主家から若干の資本と暖簾(のれん)とを分けてもらい,独立の商人となったものもいるが,大商店では多年忠勤をぬきんでた功労によって別家を許され,通い番頭となるものが多かった。番頭は終身奉公をするだけでなく,代々にわたって仕えることも珍しくなかった。
執筆者:


番頭 (ばんがしら)

番衆,番方(ばんかた)(番方・役方)の各の筆頭者を指し,〈ばんとう〉ともいわれる。中世・近世には警固などの役は主として分番交代して行われたので各種の番頭があるが,中世には,鎌倉幕府の雑色(ぞうしき)番頭,これを継承する室町幕府の公人(くにん)番頭,制度として後世に大きな影響を及ぼす室町幕府の奉公衆の番頭などが特に著名である。番頭と番衆との関係はしばしば親子に擬せられ,番頭は相番の者を自宅に招いて饗応し,日常生活や婚姻,子弟のことまで世話をやくなどして,番内の親密なとりまとめに努めることが多かった。こうした関係の端緒は,室町幕府の奉公衆(5番方)に認められる。この番頭は奉公衆の成立期である足利義教のときから,1番畠山,2番桃井,3番上野または畠山,4番畠山,5番大館の諸氏に一定し,これが番衆の譜代的な固定性と相まって家族的な信頼感情を育て,番ごとの連帯性を支えて後世の番衆制度の範となった。
執筆者: 戦国・江戸時代には武家の職名あるいは格式の一つで,一般に侍組(騎兵)の頭(侍大将)をいう。足軽,同心,徒士(かち)などの組(歩兵)の頭(足軽大将)である物頭の上位,家老につぐ地位にあった。江戸幕府の大番頭(役高5000石),書院番頭(同4000石),小性組番頭(同)が諸藩の番頭にあたる。いずれも諸大夫(しよだいぶ)の格であり,側衆(そばしゆう)(役高5000石),留守居(るすい)(同)と並んで,旗本の役職中最高の格式を誇った。
執筆者:

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普及版 字通 「番頭」の読み・字形・画数・意味

【番頭】ばんとう

組頭。〔唐書、兵志〕なるを擇びて番頭と爲し、頗(すこ)ぶる弩射(どしや)をはしむ。林軍飛騎り、亦た弩(いしゆみ)をはしむ。

字通「番」の項目を見る

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「番頭」の解説

番頭
ばんとう

1畿内周辺地域の荘園でしばしばみられる下級荘官の一つ。荘園の徴税機構で一般的なのは名(みょう)だが,平安末期以後これを再編成して,月ごとの公事(くじ)をさらに賦課しやすくすることがあった。これが番で,再編の行われた荘園を番頭制荘園という。番には既存の名を組み合わせる場合と,名を分割して再編する場合がある。また各番の面積も,均等になるよう組み合わされた場合と不均等な場合があったが,いずれも各番の徴税責任者として番頭がおかれた。番頭は有力な名主から選ばれ,番頭給や番頭免が与えられた。室町時代になると村落指導者層として,惣村自治の主要な担い手となった。

2江戸時代,商家奉公人のうち職階制で最上位に位置し,大店では支配人などとも称された。丁稚(でっち)から手代(てだい)をへて長年勤めあげてきた子飼いの奉公人で,手代以下を統轄して商売全般を差配するとともに,家政の大半も主人から任される場合が多い。大店では,別家を許されて宿持となり,主家に通勤して終身奉公するが,中小の商家では主人から資本や顧客を分与されて独立する場合もあった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「番頭」の解説

番頭
ばんとう

①輪番で勤務する際の責任者
②江戸時代,商家の使用人のうちで最高の業務支配人
平安時代以降,荘園領主は夫役の交替,年貢・公事 (くじ) 徴収のため荘園内をいくつかの番に分け,有力名主に給田あるいは給米を与えて番頭として統制させた。このことから集落の長のようになり,室町時代の惣村結合の中心となった。
丁稚 (でつち) ・手代を経たのち,この地位についた。

番頭
ばんがしら

戦国〜江戸時代,大名の職制
大名の家中の格は,家老・番頭・物頭・徒頭・馬廻・徒・足軽・中間の8階級に分かれるが,軍隊編成を行い,士卒を預って指揮する部将をいう。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「番頭」の意味・わかりやすい解説

番頭
ばんとう

商家の使用人の最高職位の名称で,丁稚 (でっち) ,手代の上位にあって店の万事を預るもの。主人に代って手代以下の者を統率し,営業活動や家政についても権限を与えられていた。商家によっては番頭1人の場合と,複数制の場合とがあるが,後者の場合は,番頭のうちの上位者が支配人とされた。近代的企業組織の成立とともに消滅した。

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世界大百科事典(旧版)内の番頭の言及

【番頭】より

番衆,番方(ばんかた)(番方・役方)の各の筆頭者を指し,〈ばんとう〉ともいわれる。中世・近世には警固などの役は主として分番交代して行われたので各種の番頭があるが,中世には,鎌倉幕府の雑色(ぞうしき)番頭,これを継承する室町幕府の公人(くにん)番頭,制度として後世に大きな影響を及ぼす室町幕府の奉公衆の番頭などが特に著名である。番頭と番衆との関係はしばしば親子に擬せられ,番頭は相番の者を自宅に招いて饗応し,日常生活や婚姻,子弟のことまで世話をやくなどして,番内の親密なとりまとめに努めることが多かった。…

【新番】より

…定数は8組(ときに増加あり)。各組に番頭1人(若年寄支配,役高2000石,役料なし,布衣,中之間詰),組頭1人(頭支配,役高600石,御目見以上,桔梗間詰),組衆20人(頭支配,役高250俵,御目見以上)があった。1866年(慶応2)廃止となる。…

【番】より

…番数や交代勤務の方法はその勤務内容によって一定しないが,1年12ヵ月,1月30ヵ日,および1巡60の干支を配分する関係で,番は12か30あるいは60の約数で編成されている場合が多い。番制度による勤務に当たることを〈当番〉,これを勤めることを〈上番〉〈勤番〉などといい,その結番交名(きようみよう)を〈番文〉〈番帳〉,編成された一つの番の統率者を〈番長〉〈番頭(ばんがしら∥ばんとう)〉あるいは〈頭人(とうにん)〉などと呼ぶ。同一の番所属者は〈合番〉〈相番〉と呼ばれ,そこにはしばしば相互扶助,連帯の感情が認められる。…

【商業使用人】より

…商法の定める商業使用人の類型には,支配人(37条以下。現在の企業では店長,支店長など多様な名称が用いられている),番頭・手代その他営業に関するある種類または特定の事項の委任をうけた使用人(43条。部長,課長,係長,主任などが原則としてこれにあたる),物品販売店舗の使用人(44条)があり,それぞれ,支配人については営業に関する包括的代理権,番頭・手代等についてはある種類または特定の事項に関する代理権,物品販売店舗の使用人については当該店舗にある物品の販売についての代理権の存在が法律上擬制されている。…

※「番頭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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