細長い糸の形状をした皮膚糸状菌に分類される真菌(カビ)の一属。トリコフィトンTrichophyton。皮膚糸状菌には、白癬菌のほかに小胞子菌属、表皮菌属もあるが、これらは同義として扱われることもある。世界で数十種類が存在し、日本で高い頻度で検出されるものにトリコフィトン・ルブラムTrichophyton rubrumとトリコフィトン・メンタグロフィテスTrichophyton mentagrophytesがある。近年では、柔道やレスリングなどの格闘技選手の間で、外来のトリコフィトン・トンズランスTrichophyton tonsuransという感染力の強い白癬菌による感染症が流行し、問題となっている。
白癬菌はヒトや動物の皮膚や毛髪および爪(つめ)の主成分であるケラチンを栄養源としているので、これらの部位に接触して感染すると、ケラチンの多く存在する表皮の角層に寄生して増殖し、白癬を生じる。ヒトの頭部の硬毛に感染すると頭部白癬(しらくも)、股部(こぶ)に感染すると股部白癬(頑癬、いんきんたむし)、足への感染では足白癬(水虫)、爪への感染では爪白癬(そうはくせん)(爪水虫)を生じる。イヌやネコなど動物から感染することもあり、小胞子菌属のミクロスポルム・カニス(イヌ小胞子菌)が寄生したペットに接触すると、表皮に発赤(ほっせき)や白癬を生じる。
[編集部 2016年11月18日]
…後者にはスポロトリコーシス,クロモミコーシス,皮膚アスペルギルス症,皮膚クリプトコックス症などがある。皮膚糸状菌症はおもに白癬(はくせん)菌の感染により発症し,頭部白癬(しらくも),体部白癬(たむし),股部白癬(いんきんたむし),足白癬(水虫),手白癬,爪白癬や黄癬などの疾患がある。日本では紅色白癬菌Trichophyton rubrumと毛瘡白癬菌T.mentagrophytesが皮膚糸状菌症の二大原因菌である。…
※「白癬菌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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